55歳の筋肥大職人が大会復帰した理由は盟友の急逝 独自理論で多くの王者を生んだ名トレーナー
30年以上の歴史を誇る世界最大級のボディコンテスト「マッスルコンテスト」。2月18日には東京大会が、19日には3年ぶりとなる日本での国際大会「マッスルコンテスト・ジャパン」が川崎市・カルッツかわさきで開催された。55歳のパーソナルトレーナー、本野卓士はクラシックフィジーク部門175センチ以下級で両日ともに3位入賞を果たした。“筋肥大職人”の異名を取り、「本野式筋膜連鎖トレーニングXY2Z」を考案し、数多くの門下生を生み出してきた名トレーナー。一昨年、27年ぶりにコンテストに復活した理由には急逝した盟友への思いがあった。東京大会直後に話を聞いた。
各コンテストで輝く選手たちを紹介「ボディコンテスト名鑑#9 本野卓士」
30年以上の歴史を誇る世界最大級のボディコンテスト「マッスルコンテスト」。2月18日には東京大会が、19日には3年ぶりとなる日本での国際大会「マッスルコンテスト・ジャパン」が川崎市・カルッツかわさきで開催された。55歳のパーソナルトレーナー、本野卓士はクラシックフィジーク部門175センチ以下級で両日ともに3位入賞を果たした。“筋肥大職人”の異名を取り、「本野式筋膜連鎖トレーニングXY2Z」を考案し、数多くの門下生を生み出してきた名トレーナー。一昨年、27年ぶりにコンテストに復活した理由には急逝した盟友への思いがあった。東京大会直後に話を聞いた。
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――率直に感想をお聞かせください。
「やはり(優勝した)外国人が大きいのと、日本人の2位の子も我々の世代と違って肩幅も広いので、そこから出る逆三角形は見事。逆に4位の子にも正直負けたかと思ったので、3位に入れてよかったな、という感じです。レベルが高いですね」
――コンテストに出るのはいつ頃から。
「20代のときに少し出ていましたが、一度辞めていました。一昨年、27年ぶりに復帰したんです。29歳からパーソナルトレーナーをやっていて、この27年間は仕事ばかりで、ほとんどちゃんとトレーニングをしていなかったんです」
――久々に出ることにした理由は。
「3年前に自分のクライアントさんで、かつ凄く仲も良かった同い年の手塚修さんという方が急逝してしまって。腎臓を悪くしてしまったんです。コロナ禍で1年ぐらいお会いしていなかった間に亡くなられてしまって。彼の奥様ともお話して、ちょっとやりましょうかということで復帰しました。彼の夢が途絶えてしまったので引き継ごうかなと。ただ、あまりにもレベルが高いので、くじけそうになっています(笑)」
――大会に出ていなかった期間もパーソナルトレーナーをしていた。
「そうですね。言い訳になってしまいますが、パーソナルトレーナーの仕事で選手育成が楽しくなったので。うちの選手、僕がトレーニングに集中するのを嫌がっちゃうんですよ(笑)・だから、僕が大会に出られるのは10月末から2月。3月以降はうちの選手がシーズンに入ってしまうので」
――指導にやりがいを感じている。
「そうですね。特にうちは『本野式筋膜連鎖トレーニングXY2Z』といって、体の使い方や癖でタイプを4類型に分けています。タイプによって大会前に食べるものも違うんです。体って筋肉同士が筋膜で繋がっていて、その筋膜には4つの筋膜連鎖があるんです。4類型によってその4つの組合せが違う。例えば、ある人は膝を曲げて立っているほうが立ちやすいけど、僕は股関節を伸ばして膝を伸ばしたほうが立ちやすいとか。全員違うんです」
――その理論は以前からあったものか。
「『筋膜連鎖』という言葉は僕が作った造語です。今から10数年前に、当時は治療のために日本に上陸したばかりだった筋膜に興味を持って。これをトレーニングに応用できないかと思って始めたのが2009年か2010年でした。ただ、当時は『筋膜連鎖トレーニング』と一括りのパターンでやっていたんですが、全日本のトップ選手の中でも、この人はできるけど、この人はできない、など1つのパターンに当てはまらないのが疑問で。
そんなときにスポーツ整体『廣戸道場』の廣戸聡一先生がテレビで『4スタンス理論』について話されているのを聞いて、大きなヒントをそこからいただきました。筋膜連鎖は4つのラインで構成されているけど、僕自身が1パターンの4つのラインだと思っていたものを、『XY2Z』の4つのパターンに分類する。4スタンス理論からいただいたヒントを筋膜に落とし込んでやっている感じです。まだ完全に完成したわけではありませんが、かなり固まったかな、とは思っています」
――門下生がたくさんいる。
「おかげさまで、昨年の金メダル総数は20いくつだったと思います。僕だけメダルが銅色(笑)。放牧主義なので、筋膜連鎖だけ教えて後は自分で勉強してね、という感じです」
――自慢の部位は。
「ふくらはぎですね。ふくらはぎは今日の大会で優勝できたんじゃないかと勝手に思っています」
(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)