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スポーツジムは今後どうあるべきか コロナ禍で「通えない」業界が立たされた岐路

パーソナルトレーナーの理想は「かかりつけ医」のような存在

 私は1990年代に、アメリカのロサンゼルスでトレーナーの仕事を学びましたが、当時からアメリカには「プライベート・トレーナー」という職業がありました。プライベート・トレーナーは、運動指導だけが仕事ではありません。例えば、朝、クライアントを車で迎えに行き、公園や浜辺でトレーニング。その後、一緒に朝食を摂る、または一緒にスーパーで食材を購入し、料理をして、食事を摂ることもあります。あるいはテニスやサーフィンを一緒に楽しんだ後、ストレッチを行い、夕食を共にする。そうやって、運動、食事を含めた生活全般のアドバイスを行う仕事でした。

 私は日本でスポーツジムのトレーナーを初めて間もなく、パーソナルトレーナーとして独立。その理由も、お客さんとの密なコミュニケーションが禁止されていたためでした。ジムにいる間だけでなく、あらゆる場面でクライアントの体を一緒に作り上げて行く。アメリカで見た、プライベート・トレーナーこそ、私のやりたいトレーナーの仕事だったからです。

 奇しくも、コロナ禍の影響で、パーソナルトレーニングのスタイルも、自分が理想としていたプライベート・トレーナーに、少し近づいていると感じています。ジムに通えなくなったことで、以前よりも頻繁に、クライアントさんからの体調や食事、トレーニングに関する相談が、メールやSNSで届くようになりました。私もパーソナルセッションでみていたからこそ、食事の嗜好やトレーニングの好き嫌いもわかりますし、直接会わなくても悩みにも答えられます。もちろん、トレーニングのセッションもオンラインで問題なくできる。クライアントさんからも「個別に相談できるジムに所属していてよかった」という声を聞くようになり、本当にうれしく感じています。

 私は、少ない回数で最大の効果を得られるトレーニングを受けられることだけが、パーソナルトレーナーのもとで運動を続けるメリットだとは思いません。運動や食事に関するちょっとした疑問にもすぐに答えてもらえたり、挫折しそうなときは心の支えにもなってもられる。例えるなら、運動に関する「かかりつけ医」のような存在が、理想として描く、パーソナルトレーナーの姿です。

 きっかけはコロナ禍でしたが、これから企業のテレワーク化も進みます。私自身、もし企業に勤めていて、人と会う機会が少なくなっていく状況に置かれたら、寂しいと感じるだろうし、気軽に体の相談ができる環境があれば幸せだなあと感じるでしょう。今後、スポーツジムやクラブはどうあるべきか。人とのつながりが求められていることがわかった今、従来の形から未来の形へと変わる、岐路に立っていると感じます。

(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

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中野ジェームズ修一

スポーツトレーナー

1971年、長野県生まれ。フィジカルトレーナー。米国スポーツ医学会認定運動生理学士(ACSM/EP-C)。日本では数少ないメンタルとフィジカルの両面を指導できるトレーナー。「理論的かつ結果を出すトレーナー」として、卓球・福原愛、バドミントン・藤井瑞希らの現役時代を支えたほか、プロランナー神野大地、トランポリン競技選手など、多くのトップアスリートから信頼を集める。2014年以降、青山学院大駅伝チームのフィジカル強化指導を担当。東京・神楽坂に自身が技術責任者を務める会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB100」がある。主な著書に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(サンマーク出版)、『青トレ 青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ』(徳間書店)、『医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本』(日経BP)などベストセラー多数。

長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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