柔道、金メダルは日本ら5か国独占に危機感 溝口紀子「本当に普及してるの?と見られる」
「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。今回は30日に行われた柔道男子100キロ超級の3位決定戦、原沢久喜(百五銀行)VSテディ・リネール(フランス)のライバル対決を、バルセロナ五輪銀メダリストで元フランス代表コーチの溝口紀子氏が分析。2024年パリ五輪に持ち越された日本柔道の悲願、最重量級再建のカギを明かすとともに、競技の普及という観点から柔道界への課題も指摘した。(構成=THE ANSWER編集部)
「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#40
「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。今回は30日に行われた柔道男子100キロ超級の3位決定戦、原沢久喜(百五銀行)VSテディ・リネール(フランス)のライバル対決を、バルセロナ五輪銀メダリストで元フランス代表コーチの溝口紀子氏が分析。2024年パリ五輪に持ち越された日本柔道の悲願、最重量級再建のカギを明かすとともに、競技の普及という観点から柔道界への課題も指摘した。(構成=THE ANSWER編集部)
【注目】育成、その先へ 少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信する野球育成解決サイト『First-Pitch』はこちらから
◇ ◇ ◇
3位決定戦は原沢選手の完敗でしたね。リネールは準々決勝で1回負けてから覚醒した感じでした。五輪3連覇のプレッシャーから解放されたのだと思います。ただでさえ、練習で投げられることも嫌がっていた選手です。3連覇ってすごい重かった。それが途絶えたとき、それでもメダルを取りたいという気持ちになった。段違いによくなりましたね。ただものじゃないと思いました。
リネールはケガもあったし、コロナもあって、実戦が積めなかったんです。この1年で24キロも減量した。ケガはモロッコでの個人合宿中に右膝の前十字靱帯を痛めました。先週、フランスでドキュメンタリー番組が放送されて、フランス国民はびっくり。極秘にしていたようですね。番組ではケガした瞬間の映像も流れました。右膝を痛めた後も練習を続けていましたが、痛かったみたいで足を引きずっていましたね。
原沢選手は全体的に組み負けていました。金メダルへの使命感も大きかったと思います。しかも、1964年東京五輪の最終日に無差別級で日本人が負けている。柔道界がリベンジだっていう雰囲気の中で、すごいプレッシャーだったと思います。言いようのない日本柔道の呪縛を彼が背負っていました。
今大会、男子は初日から4日連続の金メダルを取って、日本柔道復活かという声を聞いていました。でも、最重量級は完敗です。100キロ超級で優勝して、リオ五輪に続く2階級制覇を達成したチェコのクルパレクには誰が出ても勝てなかったと思います。
チェコの選手やリネールに勝ったロシアの選手も小さいですよね。それでも勝てた。日本選手も十分やれると思います。でも、中量級くらいの選手で強靭なフィジカルを持った選手は日本にはいない。まだ見いだされていないですよね。日本柔道の育成の仕方を抜本的に、ドラスティックに変えないと最重量級の再建は難しいと思います。
例えば、リネールはフランスでは練習していない。国内にいないんです。韓国はお家芸のテコンドーで史上初めて金メダルが取れなかった。そのことで指導は変わるでしょう。クルパレクがなぜ勝ったのかを分析することで復活の糸口が見えてくるんじゃないかと思います。