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今も忘れられない秦澄美鈴の瞳 じわり涙に咄嗟のシャッター、国立5万人が包み込んだ空間

2025年は東京世界陸上が開催されるなど、陸上界で数多くの話題が生まれた。各大会を取材した「THE ANSWER」では、選手たちが生み出した印象に残るシーンをカメラマンの写真とともに振り返る。

全ての跳躍を終えて挨拶をしたスタンドから、大きな声援が返ってきて思わず目に涙を浮かべる秦澄美鈴【写真:中戸川知世】
全ての跳躍を終えて挨拶をしたスタンドから、大きな声援が返ってきて思わず目に涙を浮かべる秦澄美鈴【写真:中戸川知世】

THE ANSWER編集部・カメラマンフォトコラム

 2025年は東京世界陸上が開催されるなど、陸上界で数多くの話題が生まれた。各大会を取材した「THE ANSWER」では、選手たちが生み出した印象に残るシーンをカメラマンの写真とともに振り返る。

 1991年以来、34年ぶりの東京開催となった9月の世界陸上。国立競技場が熱狂に包まれた9日間の中で、忘れられないのは女子走り幅跳びの日本記録保持者・秦澄美鈴の表情だった。(写真・文=THE ANSWER編集部・中戸川 知世)

 ◇ ◇ ◇

 瞳が潤む瞬間を見た。

 3回目の跳躍、記録は6メートル45。自身が持つ日本記録の6メートル97には及ばず、予選敗退が決まった。

 ベンチへ戻り、スタンドへ手を上げ2度ほど会釈。笑顔の挨拶に、観客は拍手を返した。優しく包み込まれるような空間。秦は少し驚いた表情の後、感謝を込めて再度手を振った。

 その目にじわり、込み上げる涙があった。咄嗟にズームし、シャッターを切る。心からの笑顔だ。5万人を超える観客の温かい労いが、選手に刺さったシーンだった。

 あれから3か月。今でもこの表情は忘れられない。

「跳ぶ前の手拍子じゃない拍手にすごく背中を押されて、心に染みる、温かい気持ちになって。見守られているような、そんな気分で跳ぶ世界選手権でした」(秦)

 競技人生で一度あるかどうかの母国開催。メダル、入賞はもちろん、出場したことが財産になると強く感じた。

(THE ANSWER編集部・中戸川 知世 / Chise Nakatogawa)

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