日本人1位「っしゃー!」の直後…嗚咽した青学大・安島莉玖 ファインダー越しの30分間にドラマ
2025年は東京世界陸上が開催されるなど、陸上界で数多くの話題が生まれた。各大会を取材した「THE ANSWER」では、選手たちが生み出した印象に残るシーンをカメラマンの写真とともに振り返る。

THE ANSWER編集部・カメラマンフォトコラム
2025年は東京世界陸上が開催されるなど、陸上界で数多くの話題が生まれた。各大会を取材した「THE ANSWER」では、選手たちが生み出した印象に残るシーンをカメラマンの写真とともに振り返る。
今回は5月8日から4日間、神奈川・相模原ギオンスタジアムで行われた第104回関東学生陸上競技対校選手権(関東インカレ)。男子2部1万メートル、青学大の安島莉玖(あんじま・りく、2年)が28分19秒81で4位に入賞した。撮影した約30分間、いくつもの表情を見せてくれた。(写真・文=THE ANSWER編集部・中戸川 知世)
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レンズ越しに見える顔が、周回を重ねるごとに苦しくなっていった。
序盤は集団後方でスタート。徐々に順位をあげた4キロ付近、安島の顔は苦悶に満ちたものへと変わっていく。ただ、険しい表情と順位は反比例。ペースは落ちず、留学生集団に食らいついた。
残り1キロ地点、今にも倒れそうなくらい顎が上がっていた。なぜついていけるのか不思議だ。ラスト1周のスパートで離されたが、1位スティーブン・ムチーニ(創価大)から約10秒差でフィニッシュ。自己ベストを大幅に更新する会心の走りだった。

手を叩き「っしゃー!」と絶叫した。同じ青学大の黒田然(2年)が5位で、日本人ワンツー。私は肩を組んでの撮影で目線をもらい、弾ける笑顔を押さえた。
撮影を終え、背を向けたその時。「うぐっ」と嗚咽が聞こえた。さっきまでニコニコだったはずの安島の声だ。今度は顔をくしゃくしゃにして号泣。たった数秒の間に180度表情が変わり、急いでまたレンズを向けた。
「昨年度は弱音ばかり吐いて、本当にすごく弱かった。それがやっと花開いて、こみ上げてきたものがありました。原(晋)監督のメニューを信じてやってきて良かった」
3月に行われた「大阪・関西万博開催記念 ACN EXPO EKIDEN 2025」(エキスポ駅伝)では4区14位と振るわず。苦しい時期を経て掴んだ結果に、いくつもの感情が絡み合った。
この日、安島を撮ったのは30分ちょっと。ファインダーを覗く度に違った表情が飛び込んできた。不思議と追いかけてしまう、そんな魅力を感じた。
(THE ANSWER編集部・中戸川 知世 / Chise Nakatogawa)
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