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コールド負け寸前、最後のマウンドで飛び出したハグ 泥だらけの主将と後輩捕手バッテリーの眩しさ

第106回全国高校野球選手権の神奈川大会は3回戦に突入した。「THE ANSWER」では、168チームが参加するこの大会にカメラマンが密着し、フォトコラムを連日掲載していく。第4回で取り上げるのは大和東のバッテリー。背番号「2」で主将の山内元輝(3年)と「5」の吉成樹頼(2年)だ。13日に川崎市の等々力球場で行われた試合は、桐光学園に1-13で5回コールド負けし、夏が終わった。敗北寸前のマウンドで2人が交わしたハグがまぶしく、レンズ越しに思いが伝わってきた。(写真・文=THE ANSWER編集部・中戸川 知世)

5回、3番手で登板した主将・山内元輝とハグする吉成樹頼捕手【写真:中戸川知世】
5回、3番手で登板した主将・山内元輝とハグする吉成樹頼捕手【写真:中戸川知世】

THE ANSWER編集部カメラマン「夏の高校野球神奈川大会フォトコラム」

 第106回全国高校野球選手権の神奈川大会は3回戦に突入した。「THE ANSWER」では、168チームが参加するこの大会にカメラマンが密着し、フォトコラムを連日掲載していく。第4回で取り上げるのは大和東のバッテリー。背番号「2」で主将の山内元輝(3年)と「5」の吉成樹頼(2年)だ。13日に川崎市の等々力球場で行われた試合は、桐光学園に1-13で5回コールド負けし、夏が終わった。敗北寸前のマウンドで2人が交わしたハグがまぶしく、レンズ越しに思いが伝わってきた。(写真・文=THE ANSWER編集部・中戸川 知世)

「どんな言葉を交わしているのだろう?」

 そんな疑問を胸に、夢中でシャッターを切った。大和東は1-13と点差を大きく広げられた5回1死、それまで一塁、捕手とポジションを移ってきた山内がマウンドに上がった。投球練習を終えると、三塁から捕手に回った吉成がマウンドに駆け寄り、いくつか言葉を交わした。最後に吉成が山内を包み込むようにハグを交わし、ポジションへ散った。

 2人とも、この日2回目のポジション移動。このタイミングで、5人の選手のポジションが変わるアナウンスが流れた。高校野球では珍しいことではないが、誰がどこに行くのかレンズで追っていた。選手がグラウンドで交差するなか、右肩に赤い主将マークをつけた背番号2がマウンドへ向かうのが見えた。ユニホームは泥だらけ。そして、生まれた抱擁に夏にかける思いを感じ、試合後その姿を探した。

 見つけた山内に涙はない。笑みまで見せながら、受け取った思いを明かしてくれた。吉成には「最後まで頑張って投げよう」と言葉をかけられたのだという。普段は嬉しい場面でしか行わないハグ。それがこの日は自然と投球前に出たのだ。

 1学年上の山内にとっては、これが最後の夏。「点差は離れていたけど、仲の良い吉成からのハグは嬉しかった」という。吉成が入学してきた当時から、なぜかウマが合ったという2人の熱い思いが通じ合った。

 五味弘介監督から「最後は主将に頼む」と託され投じた4球。1死一、二塁のピンチから中飛、遊ゴロとアウトを重ね、イニングを終わらせた。2人の思いは実った。山内は「練習でやってきたことをできたので、悔いはないです」と、さわやかに球場を後にした。

 泥だらけのユニホームで、思わず体が動いたとしか言いようがないハグに、濃い時間を共有してきた仲間との友情が見えた。高校野球らしさがあふれる、あまりにもまぶしいシーンだった。

(THE ANSWER編集部・中戸川 知世 / Chise Nakatogawa)

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