「13人でグラウンドに」 女子だからと諦めない、マネジャーの可能性を広げる横浜翠陵の7分間
第106回全国高校野球選手権の神奈川大会は、7日から熱戦を展開中。「THE ANSWER」では、168チームが参加するこの大会にカメラマンが密着し、フォトコラムを連日掲載していく。第2回で取り上げるのは、横浜翠陵の女子ノッカーだ。8日にサーティーフォー保土ヶ谷で行われた1回戦で、横浜翠陵は湘南学園を7-1で下し2回戦進出。試合前のグラウンドでノックバットを握ったのは、帽子から長い髪の毛をなびかせた女子マネジャーだった。(写真・文=THE ANSWER編集部・中戸川 知世)
THE ANSWER編集部カメラマン「夏の高校野球神奈川大会フォトコラム」
第106回全国高校野球選手権の神奈川大会は、7日から熱戦を展開中。「THE ANSWER」では、168チームが参加するこの大会にカメラマンが密着し、フォトコラムを連日掲載していく。第2回で取り上げるのは、横浜翠陵の女子ノッカーだ。8日にサーティーフォー保土ヶ谷で行われた1回戦で、横浜翠陵は湘南学園を7-1で下し2回戦進出。試合前のグラウンドでノックバットを握ったのは、帽子から長い髪の毛をなびかせた女子マネジャーだった。(写真・文=THE ANSWER編集部・中戸川 知世)
時折笑顔を見せながら勢いのある打球を飛ばした。試合前の7分間ノック、ボールを渡す山本純白マネジャー(3年)とハイタッチをしてバッターボックスに入ったのもまた、女子マネジャーの高柳依奈さん(3年)だった。「ファースト!」。守備位置を叫びながら左へ右へ、内外野へ白球を飛ばす。捕手の前に球を転がしたり、投げたりと、慣れた動作でスムーズにノッカーを務めた。
試合前のグラウンドに女子部員が2人。男子の野太い声の中で少し高い声が響いた。試合前、最後の感覚を確かめる7分ノック。女子によるノックはまだまだ珍しい光景だ。大事な場面でバットを振る姿に私も「部員全員が高柳さんを信じているんだ」と感じ、女子だからできないわけじゃないとマネジャーの新たな可能性を体感した。
ノッカーを務めるようになったのは「同級生13人でグラウンドに立ちたい」という高柳さんの思いからだった。
3年生は選手が11人、マネジャーが2人。しかし記録員としてベンチに入れるのは1人だけだ。そこで野球未経験の高柳さんが、ノッカーとしてグラウンドに立とうと決意した。取り組み始めた2年秋はバットにボールが当たらなかったが、慶大でもプレーした父・博文さんに「まわりの選手は10年プレーしてきた。10倍練習しなさい」とアドバイスを受け、手が空けばトスを上げ、家ではバットを振った。
時間があれば練習に励み、迎えた夏の1回戦。最初の内野への打球がうまく飛ばなかった。すると後ろから「おい、大丈夫かノッカー!」と仲間のゲキが飛んだ。愛ある言葉を受けた高柳さんは「ちゃんとやらないといけないなと気が引き締まりました」と、見事に7分間の大役をこなしてみせた。
試合後に、選手と同じグラウンドに立って何を感じたのか聞くと「素直に立てて嬉しい、次の機会をくれたみんなに感謝」と笑顔をこぼし、次戦へ気持ちを高めていた。
やると決めたことはやり抜くという高柳さんの姿には、同じ女性の私も「挑戦するという気持ちを忘れないようにしたい」と熱い思いが込み上げてきた。
(THE ANSWER編集部・中戸川 知世 / Chise Nakatogawa)