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OB140人が寄付、創部50周年に再び輝く左胸の2文字 泥だらけで体現した「県立最強」山北の粘り強さ

第106回全国高校野球選手権の神奈川大会は、7日から熱戦がスタートした。「THE ANSWER」では、168チームが参加するこの大会にカメラマンが密着。フォトコラムを連日掲載していく。第1回で取り上げるのは、県西部の足柄上郡にある山北の復刻ユニホームだ。7日に中栄信金スタジアム秦野で行われた1回戦で、山北は座間に3-2で粘り勝ち。ナインがまとったユニホームは、OB140人が思いを込めて寄贈した特別なものだった。(写真・文=THE ANSWER編集部・中戸川 知世)

胸に「山北」の文字を掲げ、泥だらけで6回にヒットを放ちベンチに向かって吠える山北の主将・府川大和【写真:中戸川知世】
胸に「山北」の文字を掲げ、泥だらけで6回にヒットを放ちベンチに向かって吠える山北の主将・府川大和【写真:中戸川知世】

THE ANSWER編集部カメラマン「夏の高校野球神奈川大会フォトコラム」

 第106回全国高校野球選手権の神奈川大会は、7日から熱戦がスタートした。「THE ANSWER」では、168チームが参加するこの大会にカメラマンが密着。フォトコラムを連日掲載していく。第1回で取り上げるのは、県西部の足柄上郡にある山北の復刻ユニホームだ。7日に中栄信金スタジアム秦野で行われた1回戦で、山北は座間に3-2で粘り勝ち。ナインがまとったユニホームは、OB140人が思いを込めて寄贈した特別なものだった。(写真・文=THE ANSWER編集部・中戸川 知世)

 胸に漢字で「山北」の文字を掲げ、粘りに粘った。泥臭さを体現するように、回を重ねるごとに土で汚れていくユニホーム。左胸の、丸みを帯びた太い字体が目立つ。この日、選手は特別な思いまでまとって戦っていた。

 山北は1980年代から90年代初頭にかけ「県立最強」と呼ばれた古豪。ただ最後の4強進出は93年で、近年は3回戦の壁に苦しんでいる。今年で創部50周年ということもあり、OB会が「強かった時代のユニをもう一度着て、勝ち進んでほしい」との思いで復刻ユニホームを寄贈した。資金面が難問だったが、3年間にわたって貯めたお金と、節目の年ならばと決起した約140人のOBの寄付で、25人分を揃えることができた。

 4回に2点の先制を許した山北は6回、1死満塁から「5番・左翼」の近藤凌汰(3年)の中犠飛と、「6番・右翼」の江藤幸輝(3年)の左前適時打で同点に追いつく。その後両チームが一歩も譲らず迎えた9回、先頭の近藤が粘って四球で出塁し、1死一、三塁から桐生惺史郎投手(3年)がスクイズを敢行。三走の近藤が生還して勝ち越し、9回裏も守り抜いて1回戦を突破した。

OBから寄贈された復刻ユニをまとって整列する山北ナイン【写真:中戸川知世】
OBから寄贈された復刻ユニをまとって整列する山北ナイン【写真:中戸川知世】

 創部2年目に、このユニホームを誕生させた人物もこの粘勝を見守った。部長として山北を85年と89年の2回、神奈川大会の準決勝へ導いた池田公平さんだ。「やっぱりうれしいね」。躍動するナインを前にすると目を細め、当時を振り返る。

 創部1年目は白の綿生地に「山高」の2文字を横に並べたデザインだった。開会式で隣のチームに言われた言葉が忘れられない。「練習着で来たのかよ」。部長に就任した2年目に、強豪社会人だった電電関東(現NTT東日本)をまねたデザインにしたのが、今回の復刻の元となったユニホームだ。山北の文字は、池田さんの妻の父が書いた3種類の中から当時の部員が選んだもので、たくさんの思いが乗っている。

 主将としてチームをまとめる府川大和捕手(3年)は「1点にこだわって粘り強く勝てた。伝統あるユニで勝って、少しでも恩返しできたら」と力強く感謝を口にした。さらに勝利を手にした喜びからか、涙ぐむ場面もあった。

 最後まであきらめずに勝利を手繰り寄せた山北。泥だらけになりながら躍動するその姿に「県立最強」時代から変わらぬ粘り強さが見えた。

(THE ANSWER編集部・中戸川 知世 / Chise Nakatogawa)

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