ラグビーW杯、国歌斉唱で目が留まったスタンド2階席の家族 好ゲームを予感させた美しい景色
熱戦が繰り広げられたラグビーワールドカップ(W杯)フランス大会。「THE ANSWER」は開幕戦から決勝戦まで現地取材したカメラマン・イワモトアキト氏のフォトコラムを随時掲載する。今回は27日(日本時間28日)に行われた3位決定戦でイングランドに敗れたアルゼンチンから。
ラグビーW杯フランス大会 カメラマン・イワモトアキト氏のフォトコラム
熱戦が繰り広げられたラグビーワールドカップ(W杯)フランス大会。「THE ANSWER」は開幕戦から決勝戦まで現地取材したカメラマン・イワモトアキト氏のフォトコラムを随時掲載する。今回は27日(日本時間28日)に行われた3位決定戦でイングランドに敗れたアルゼンチンから。
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試合前の国歌斉唱時、スタンド2階席からピッチを見つめる一組のアルゼンチンの家族に目が留まった。前奏から肩を振るわせて感極まる父を、母は優しく抱きしめた。娘は瞳をうるませ、息子は輝くような笑顔で拍手を送っていた。W杯3位決定戦、その美しい景色が好ゲームを予感させた。
熱い、熱すぎる。彼らファンのほとばしるパッションが、選手をさらに熱くさせ、ラグビーをもっと面白くさせてくれる。直向きに前へ、愚直にぶつかり続ける男たちの姿は、見るものの魂を激しく揺さぶった。
前半、イングランドのぶ厚いディフェンスを切り裂き、トマス・クベリがゴールへと飛び込んだ。鋭い眼光、しなかやな動きから相手の急所を襲った。その姿はさながら獲物に向かって襲いかかるピューマのようだった。
後半、鮮やかなステップでサンティアゴ・カレラスが抜け出し、イングランドゴールへと駆けた。その視線の先にはファンたちの歓喜の姿があった。
26-23、僅差だった。イングランドとの3位決定戦に敗れはしたものの、ラス・プーマス(アルゼンチン代表の愛称)の情熱的なラグビーは、ファンたちの心を魅了した。
試合後、2階席のあの家族を探した。目を真っ赤にさせ、旗を降り、ピッチをまわる選手たちに向かって惜しみない拍手を送る姿が、また胸をぐっと熱くさせた。
■イワモト アキト / Akito Iwamoto
フォトグラファー、ライター。名古屋市生まれ。明治大を経て2008年に中日新聞入社。記者として街ネタや事件事故、行政など幅広く取材。11年から同社写真部へ異動。18年サッカーW杯ロシア大会、19年ラグビーW杯日本大会を撮影。21年にフリーランスとなり、現在はラグビー日本代表の試合撮影のほか、JAPAN RUGBY LEAGUE ONEオフィシャルフォトグラファーを務める。
(イワモト アキト / Akito Iwamoto)