フライを追い、カメラマン席に消えた慶応の捕手 心配してくれた東海大相模ベンチと爽やかな会話
第105回全国高校野球選手権・神奈川大会は8日から熱戦が繰り広げられている。「THE ANSWER」は新人カメラマンのフォトコラムを連日掲載。今回は、慶応の捕手・渡辺憩(3年)。24日に横浜スタジアムで行われた準決勝第1試合、チームは東海大相模に12-1と圧倒し、6回コールドで決勝進出を決めた。2回には渡辺の闘志あふれるプレーを撮影した。(写真・文=THE ANSWER編集部・中戸川 知世)
THE ANSWER編集部・新人カメラマン「夏の高校野球神奈川大会フォトコラム」
第105回全国高校野球選手権・神奈川大会は8日から熱戦が繰り広げられている。「THE ANSWER」は新人カメラマンのフォトコラムを連日掲載。今回は、慶応の捕手・渡辺憩(3年)。24日に横浜スタジアムで行われた準決勝第1試合、チームは東海大相模に12-1と圧倒し、6回コールドで決勝進出を決めた。2回には渡辺の闘志あふれるプレーを撮影した。(写真・文=THE ANSWER編集部・中戸川 知世)
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3-0で迎えた2回、東海大相模の打者が打ち上げたフライを追い、渡辺はマスクを取って三塁ファウルゾーンを走った。打球を見上げたまま一直線に駆けたが、膝上くらいの高さの仕切りに引っかかって頭からカメラマン席に落ちる。身体が向こう側に消えて、代わりに逆さまになった脚が見えた。
なんとしてもアウトを取ろうというプレーにガッツを感じたと同時に思った。怖くないのだろうか……と。
「もうちょっと(ファウルゾーンの)奥行きがあると思ったんですけど……(笑)」
試合後に聞いてみると、明るく笑った当人には落ちる気はなかったという。故に、恐怖心はなかった。「必死で球を追いかけてたら落ちちゃいました。びっくりはしましたけど、痛いとかはないです」
140キロを超える速球を受け、走者が突っ込んでくる扇の要を守る捕手。「打撃よりも守備で貢献したい」。そのタフさが垣間見えた答えだった。
この場面でもう一つ、いいなと思った場面があった。カメラマン席に落ちた渡辺を引き上げようと、慶応の選手が駆け寄ってくる。すると、すぐ近くの三塁ベンチにいた東海大相模の選手も心配して身を乗り出し、「大丈夫?」と声をかけてくれたという。
「大丈夫です!」と笑顔で答えた渡辺はすぐ立ち上がると、元気に本塁まで戻り、マスクを手に待っていてくれた相手打者にも笑顔を見せた。
人のことを思いやる気持ちは味方も相手も関係なく持っている、高校野球には、それが色濃く映し出されているように思う。8日の神奈川大会初日から取材させてもらい、残すは泣いても笑っても、あと1試合。改めて、球児たちの心温まるシーンを見せてもらった。
(THE ANSWER編集部・中戸川 知世 / Chise Nakatogawa)