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「五輪はいつの時代も政治利用され続ける」 避けられぬ負の歴史に聖地アテネで“恒久開催”のアイデア

スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト「THE ANSWER」はパリ五輪期間中、「シン・オリンピックのミカタ」と題した特集を連日展開。これまでの五輪で好評だった「オリンピックのミカタ」をスケールアップさせ、4年に一度のスポーツの祭典だから五輪を観る人も、もっと楽しみ、もっと学べる“新たな見方”をさまざまな角度から伝えていく。「社会の縮図」とも言われるスポーツの魅力や価値の理解が世の中に広がり、スポーツの未来がより明るくなることを願って――。

パリ五輪の採火式が行われたアテネ、この地で恒久開催をするべきか【写真:Getty Images】
パリ五輪の採火式が行われたアテネ、この地で恒久開催をするべきか【写真:Getty Images】

「シン・オリンピックのミカタ」#78 改めて考えるオリンピックの歴史と意義・第2回

 スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト「THE ANSWER」はパリ五輪期間中、「シン・オリンピックのミカタ」と題した特集を連日展開。これまでの五輪で好評だった「オリンピックのミカタ」をスケールアップさせ、4年に一度のスポーツの祭典だから五輪を観る人も、もっと楽しみ、もっと学べる“新たな見方”をさまざまな角度から伝えていく。「社会の縮図」とも言われるスポーツの魅力や価値の理解が世の中に広がり、スポーツの未来がより明るくなることを願って――。

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 オリンピックは言うまでもなく、単にメダルを争うスポーツの競技会ではない。五輪憲章によればオリンピズムとは「肉体と意志と精神のすべての資質を高め、バランスよく結合させる生き方の哲学」であり、「スポーツを文化、教育と融合させ、生き方の創造を探求するもの」である。その目的は「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てること」。パリオリンピック開催中の今だからこそあらためてオリンピックの歴史を学び、五輪の意義をあらためて噛みしめたい。

「オリンピックは平和の祭典」など五輪に関する多数の著作を持ち、五輪研究者として知られる東京都立大・武蔵野大客員教授の舛本直文さんにインタビューした。第2回のテーマはオリンピックの政治利用について――。(全3回の第2回、取材・文=二宮 寿朗)

 ◇ ◇ ◇

――ナチス政権下において開催された1936年のベルリンオリンピック。まさにオリンピックが政治利用された悪例ともなりました。

「オリンピックにおける負の歴史だと思います。パトリオティズム、つまりは愛国心を高めて国内を統合する一方で、我々の民族は優秀だというようなナショナリズムを世界に発信していく。その好機としてナチスは一大スポーツイベントを利用したわけです。これはアドルフ・ヒトラーのアイデアではなく、宣伝相のヨーゼフ・ゲッペルスのアイデアだったとは思いますね。のちに米ソ冷戦において1980年のモスクワ、1984年のロサンゼルスではボイコット合戦も起こります。オリンピックが政治家から利用されるというのは負の流れであるとともに、当然の流れと言っていいのかもしれません。いつの時代も政治家たちは、オリンピック開催を絶好のチャンスだと思っているわけですから」

――米ソの冷戦時代に入っていた1952年のヘルシンキオリンピックは、選手村が東西陣営で分かれるという措置が取られました。そういった分断はあったにせよ、ソ連も参加して「平和の祭典」の形が一応整ったとも言えます。

「オリンピックは平和希求運動だと理解すべきなんですね。平和が実現してないから、何とかみんなで努力しましょうよというメッセージを発する好機として、ということです。休戦は国連総会で決議したからといってすぐ実現するとも限らないし、そもそも国連総会決議には拘束力はありません。オリンピックを世界平和に向けて考えるきっかけにするということ。大会期間中の1か月間、休戦したらいろんな対話も起きるかもしれない。そういう願いですよね。

 ただし、それはあくまで理想。ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻においてロシアのウラジーミル・プーチンにしても、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキーにしても今回のオリンピック期間中の休戦反対を明言しました。そんなことをしていたら、相手を利するだけだと。現実の立場に置かれた人々の素直な考え方だろうと思います。理想と現実のギャップはあるにしても、平和へ向けた対話あるいはきっかけの一つとして、何とかオリンピックを使えないかということですね」

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二宮 寿朗

1972年生まれ、愛媛県出身。日本大学法学部卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。2006年に退社後、「Number」編集部を経て独立した。サッカーをはじめ格闘技やボクシング、ラグビーなどを追い、インタビューでは取材対象者と信頼関係を築きながら内面に鋭く迫る。著書に『松田直樹を忘れない』(三栄書房)、『中村俊輔 サッカー覚書』(文藝春秋、共著)、『鉄人の思考法~1980年生まれ戦い続けるアスリート』(集英社)、『ベイスターズ再建録』(双葉社)などがある。

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