微笑み→戦闘モードで話題沸騰 五輪女子ハードラー田中佑美、スタート直前の笑みに隠れた集中法
パリ五輪は8日、陸上女子100メートル障害の敗者復活戦が行われ、初出場の25歳・田中佑美(富士通)が12秒89(向かい風0.2メートル)の組2着で準決勝進出を決めた。緊張するはずのスタート直前に微笑み、一気に戦闘モードに入る姿が話題に。余計なものを視界から遮ることが大切な短距離で独自の集中法がある。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
パリ五輪
パリ五輪は8日、陸上女子100メートル障害の敗者復活戦が行われ、初出場の25歳・田中佑美(富士通)が12秒89(向かい風0.2メートル)の組2着で準決勝進出を決めた。緊張するはずのスタート直前に微笑み、一気に戦闘モードに入る姿が話題に。余計なものを視界から遮ることが大切な短距離で独自の集中法がある。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
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微かに口角を上げ、自分のレーンだけに視線を送った。
敗者復活戦。ピストル音を待つ会場は静まり返った。田中の視界にあるのは10台のハードルだけだ。スターティングブロックに足を乗せる直前、わずかに微笑んだ。号砲とともに好反応。先頭争いに加わり、2着でゴールに飛び込んだ。初出場で準決勝進出だ。
ダメなら帰国の重圧がかかる局面。緊迫した場面で笑みを浮かべ、ネット上では「レース直前に笑ってる。すごい」「いい笑顔」「レース前の表情がいい」と話題沸騰となった。
田中は外野のざわめきをシャットアウトし、自分の走りに集中するのは得意な方。レース前も「自分は何時から緊張する」と感情の動きまで予定にセットしてきた。「それ以外は思考を放棄する。今までもそうやって緊張をそらしてきた」。気を紛らわせるため、空を見上げることも。
他者に邪魔されず、自分のやるべきことに集中することが求められる競技。以前、視界をシャットアウトする方法についてこんなことを教えてくれた。
「高校生の頃からなんですけど、自分がふと競技場を歩いている時に『何を見ているのか』を意識しています。コーチの顔色を見たりしている時は、自分以外の外的要因に対して緊張していると思うんですよね。それ以外に『あ、ちょっとハムストリングが張ってるな』『ハードルの位置が……』と思い始めたら、それは自分にフォーカスしているということ。自分の内面的なところを見ていることになります。
緊張にもいろいろな種類があるんです。外に対して緊張しているのであれば、それは方向転換が必要。自分に対して緊張しているのであれば、それはきっとアドレナリンに変わるからそのまま行こうっていう感じです」
スタート直前の微笑みは、内面と向き合えたということだろう。だから、初めての夢舞台、向かい風でも自己ベスト12秒85に迫る好タイムを出し、準決勝にたどり着いた。世界デビューで予選落ちした昨年ブダペスト世界陸上からの成長を刻んだ。
立命大出身の25歳。独自の集中法は誰から教わったのか。
「いや、なんとなくですね。緊張することが多かったので、なんとなく身につけました(笑)」
準決勝は日本時間9日午後7時5分からの1組目。どんな姿を見せてくれるのか。スタート前から注目だ。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)