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練習量5倍の日本式指導に反発 「ぬるま湯」柔道エジプト代表を変えた日本人の覚悟 魚市場の仲卸から転身

パリ五輪柔道エジプト代表を率いる泉浩監督(右から2人目)。左端が門田優吾コーチ【写真:門田優吾コーチ提供】
パリ五輪柔道エジプト代表を率いる泉浩監督(右から2人目)。左端が門田優吾コーチ【写真:門田優吾コーチ提供】

練習量は5倍に増加「最初は愚痴ばかりでした」

 練習内容も、大きく方向転換した。

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 引き継いだ時には練習は午前のみ、約1時間だったのを、午前・午後の2部制とし、4時間半から5時間に増やした。

「だから5倍ですね。乱取りも今まで20分ぐらいしかやっていなかったのを最低1時間していますし、打ち込みも長くしました」

 選手は不満を露わにした。「最初は愚痴ばかりでしたね。1回“終わらない乱取り”をやったんですよ」。厳しい練習をこなし、より強さを求めるファイティングスピリットも欠如していた。

 しかし、徐々に選手たちの意識が変わっていく。

「ナショナルのトップチームで、こんだけやってんだぞっていう自負が生まれたんでしょうね。ぬるま湯にどっぷり漬かっていたと思います」

 指導は精神面を重視。「技がどうこうというより、勝つには気持ちが7割なんだと、口酸っぱく何回も言っています。特別なことをやっているわけではないですね」。五輪のような大舞台は、最後はメンタリティーの強さが勝負を分けることも多い。

「試合になった時に、家族のことをまず思ってやりなさいと伝えています。自分1人じゃなくて、家族や大切にしている人のことを考えて、きつい時はそういうふうに考えてやるのが一番力が出るもんだよという話をしながら、気持ちだよ、気持ちだよと」

 ベースにあるのは、泉監督が中高時代を過ごした講道学舎の教えだ。1964年東京五輪男子無差別級でアントン・ヘーシンク(オランダ)に金メダルを奪われたことを契機に設立された柔道私塾で、古賀稔彦氏や吉田秀彦氏、最近では五輪連覇の大野将平など数多くの金メダリストを輩出している。

 2015年に閉塾し「残念な気持ちが強い」と回顧した泉監督は、「それこそ掃除しろとか礼儀もそう。家族のために戦いなさいとか、学舎の教えが基本だと思っています。間違いなく、そこは揺るぎないです。今の若い世代は、学舎を知らない世代。やっぱり、どこかであったという歴史は持っておきたいですね」。

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