記者質問に怒り 3連覇の夢散ったNZ、負け試合の後で見えたハンセンHCの人心掌握術
主将リードに対する質問にぶ然「そういう質問はいかがなものか」
会見では終始穏やかな表情を浮かべていたハンセンHCだが、その表情を変えた場面があった。終盤に海外メディアから同席した主将キーラン・リードに「選手はハングリーさに欠けていたのか?」と士気を問う質問を投げかけた時だった。リードは「私たちが今日まで、どれくらいのハードワークを積み重ねてきたかは、ご覧いただけたはずだ。試合の細かい点を見ればミスもあったかもしれない。だが、全力を投じたし、なんとか食らいつこうと、本気を見せて必死に戦った」と返答。すると、指揮官は即座にマイクに向かってやや怒気を含んだ言葉を発した。
「もう少し早く、よりハングリーさを前面に出せれば良かったという話。決して、選手たちにハングリー精神が欠けていたという話ではない。オールブラックスはW杯で準決勝まで勝ち進んだんだ。自分たちの歴史を築き、能力を発揮するためにこの舞台にいる。そういう質問はいかがなものか」
負けた事実に変わりはないが、それと同様に選手が手を抜かず80分間を戦い抜いた事実も変わらない。家族との時間や余暇、体など、さまざまなものを犠牲にしながら、オールブラックスの誇りを看板を守り抜くためにプレッシャーを全身に受けながら努力を重ねた選手の姿を、誰よりも側で見続けてきた。だからこそ、ハンセンHCは選手の士気を問う質問が許せなかったのだろう。そしてまた、その感情を包み隠さず、選手を守る盾であり続けた姿勢こそ、個性豊かなタレント集団を1つにまとめあげることができたのだろう。
決勝には進めなかったが、11月1日には3位決定戦が行われる。
「負けた時にこそ、人間は本来の性格が出る。勝っても負けても変わらず、同じ人間であり続けること。気落ちしてはいるが、負けた事実を受け入れたい。そして、次の試合に向けて、頭を切り替えていく」
負けた時こそ頭を垂れず、前を向いて力強く歩む。最後は白星を飾り、笑顔で大会を締めくくりたい。
(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)