それぞれが抱く平尾誠二氏と「10.20」への思い 命日に歴史的決戦を迎える“必然”
長谷川コーチが語る平尾氏との思い出とは…
長谷川コーチは、平尾氏とのこんなエピソードも明かしている。
「平尾さんとの一番の思い出は、(1999年W杯)開幕戦の前の日に、部屋に帰ってきたら手紙が置いてあった。僕の性格だったり、やってきたことに対して、そんなに長い文章ではないけど、励みになることが書いてありました。それを見て、しっかり頑張らないと、この人のために頑張らないと、日本ラグビー界のために頑張らないと、と思えましたね。いいモチベーションで開幕戦に臨めたことを覚えています。
なんで私が日本代表に選ばれたのかを聞いたら『スクラムに決まってるやろ』って言われて(笑)。これはしっかり押さないと、と。本当に選手のことを見てくれている、いい指導者でした。
あの時、平尾ジャパンで一番ビックリしたのが、各ポイントにちゃんとした専門家がいて、それを平尾さんと土田さんがうまく配置して回すという、しっかりしたシステムを作っていたことです。日本ラグビー界のためにこんなに頑張っているのに、普段はそのすごさを見せずに、選手にはとてもフレンドリー。サラッとすごいことをやっている二人のようになりたいと思いました」
現在、神戸製鋼でプレーする山中は、そのラグビー人生を平尾氏に救われた。早稲田大から神戸製鋼に入社してすぐ、日本代表合宿に参加していた山中は薬物検査で陽性反応を示してしまう。口ヒゲを生やすための育毛剤に違反薬物が含まれており、国際ラグビー評議会の裁定により、2011年4月から2年間、選手資格停止処分となったのだ。
この時、会社からの解雇も覚悟したというが、社員として働き、2年後にラグビー部へ復帰できるように計らってくれたのが平尾氏だった。「僕にとってはすごく……ラグビーを続けるにあたって、平尾さんがいなければ、今の僕もいない。そういう感謝の気持ちでいっぱいです」と噛みしめるように語った。
リーチ・マイケル主将も、先発メンバー発表が行われた18日に「明日(19日)に特別な日だということをチームに伝えたいです」と話していた。
選手もスタッフもファンも、それぞれがそれぞれの思いを抱く20日。日本と南アフリカが全力をぶつけ合う80分間を、平尾氏は特等席から見守っているに違いない。
(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)