オールブラックスが格下カナダを叩きのめした理由 「63-0」に隠されたもう一つの目的
ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会は2日、世界ランク1位のニュージーランドが同22位のカナダを63-0と完膚なきまでに叩きのめした。前半だけで4トライを奪って28-0で折り返すと、後半にはそれを上回る5トライ。今大会最多タイの9トライ、さらにはプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたSOモウンガが9回のコンバージョンを全て成功させる活躍で、63-0と圧巻の零封を決めた。前半を終えた時点でボーナスポイント獲得が決まっていたにも関わらず、なぜニュージーランドは最後まで手を抜かなかったのか。それは、この試合にはチーム内の競争という、もう一つの目的が隠されていたからだ。
初戦の南アフリカ戦から先発メンバーを11人入れ替え
ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会は2日、世界ランク1位のニュージーランドが同22位のカナダを63-0と完膚なきまでに叩きのめした。前半だけで4トライを奪って28-0で折り返すと、後半にはそれを上回る5トライ。今大会最多タイの9トライ、さらにはプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたSOモウンガが9回のコンバージョンを全て成功させる活躍で、63-0と圧巻の零封を決めた。前半を終えた時点でボーナスポイント獲得が決まっていたにも関わらず、なぜニュージーランドは最後まで手を抜かなかったのか。それは、この試合にはチーム内の競争という、もう一つの目的が隠されていたからだ。
ニュージーランドは9月21日に行われた初戦、南アフリカ戦に23-13で勝利した。この日から中10日で迎えたカナダ戦だが、先発メンバーを11人、大幅に入れ替えた。スティーブ・ハンセン・ヘッドコーチ(HC)はレギュラー陣をほぼ固定して起用しており、それが初戦南ア戦のスタメン。いわば、この日の先発メンバーはリザーブ組がほとんどで、今後決勝トーナメントへの進出をにらみ、自己アピールをしておく必要があった。
その中でもアピールに成功したのは、日本に縁のある2選手だろう。1人は、2012-13シーズンをトップリーグのパナソニックでプレーしたCTBソニー・ビル・ウイリアムズだ。ボクサーでもあった変わり種は、前半16分にフェイントパスから内に切り込んで敵ディフェンスをこじ開けると、そのまま中央へ飛び込んでトライ。さらには前半終了間際にはFBバレットへのパスキックでトライを演出したり、たびたびオフロードパスをつないだり、34歳のベテランとは思えぬ運動量を見せつけた。これにはハンセンHCも「このチームは才能あるミッドフィールド(CTB)に恵まれている。彼のように常に前に進むプレースタイルを持つ選手がいるのはいいこと」と頷いた。
もう1人は、後半最初のトライを決めたWTBリーコ・イオアネだ。父のエディーはサモア代表としても活躍したラグビー選手で、かつてリコーでプレーしていた。所属先と知人の娘の名前にちなんで「リーコ」と命名された22歳の若きウィングは将来を嘱望される選手の1人。後半1分も経たないうちにトライを決めると、湿気の高い条件ながら80分を戦い抜き、要所で存在感を光らせた。
ハンセンHCは「湿気が多い中でもみんながよく頑張ってくれた。本当に難しいコンディションでゲームの主導権を握ってくれた」と選手を労ったが、その目に大きなインパクトを残した選手は誰だったのか。一次リーグの正念場となる12日のイタリア戦で先発メンバーが、その答えとなりそうな予感だ。
(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)