日本人が“日本の価値”を知るW杯 アイルランドファンは富士山に息を呑んだ
ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会は28日、日本が世界ランク2位の強豪・アイルランドを19-12で破り、歴史的金星を挙げた。4万7813人が詰めかけた静岡・エコパスタジアムから列島に熱狂を呼んだ日、取材の裏で印象的な出来事があった。
「W杯取材コラム」―新幹線車内で「Mt.Fuji?」と声をかけてきた1人の女性ファン
ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会は28日、日本が世界ランク2位の強豪・アイルランドを19-12で破り、歴史的金星を挙げた。4万7813人が詰めかけた静岡・エコパスタジアムから列島に熱狂を呼んだ日、取材の裏で印象的な出来事があった。
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日本とアイルランドの“戦い”は、品川駅から始まっていた。この日午前、下りの新幹線ホームは「白と赤」と「緑」のユニホームを着た人々が多数。行楽客も重なる土曜とあって指定席が取れず、自由席に乗り込むと、車内の通路まで人がびっしり。身動きが取れない通勤電車状態に……。乗り込んだアイルランドファンは「(座席は)ノーチャンスだ」と苦笑いした。
取材に向かう私も仕方なく、デッキの扉付近に立って、掛川までの道のりをやり過ごそうとしていた。そして、1時間ほど経った頃、箱根を過ぎると、混雑も緩和された。ぼんやりと考え事をしながら車窓を眺めていた時、背後から声が聞こえた。
「Mt.Fuji?」
振り返ると、外国人女性が指を差し、窓の外を見つめていた。「富士山?」。はっとしてもう一度、車窓を見ると、街並みの向こうに雄大な景色が広がっていることに気づいた。慌てて「そうだ」と説明すると途端に目が輝き、「ワオ」と息を呑んだ。見ると、アイルランドカラーのシャツを着ている。トイレに立った途中に富士山が目に入り、声をかけてくれたようだ。
しかし、出張で頻繁に新幹線に乗る手前、車窓から富士山が見えることに特別な意識はない。実際、言われるまで気づかなかった。この日は曇りで山頂付近に雲がかかってもいた。それでも、しばらく食い入るようにして外を見つめ、「とても美しいわ」と言い、満足げに去って行った姿を見ると、富士山が初めて見た人にとって、いかに価値があるものかを考えさせられた。