渡邊雄太、右手負傷し足踏まれても“魂の34得点” 胸中告白「自分への怒りが凄かった」
重圧抱えたW杯「バスケ人生で初めてプレッシャーに負けていた」
試合終了まで残り1分45秒。相手に足を踏まれて苦悶の表情を浮かべたが、ファウルを獲得して手を叩く。フリースローを2本ともきっちり決めた。直後に相手のシュートに手を伸ばし、わずかに触る。そこからカウンターでダンクを決め、思い切り叫んだ。ラストは交代。ベンチに腰かけると、力なくうずくまった。ロッカールームに向かう際、足を引きずるように歩いた。
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「(7日の)ニュージーランド戦が終わった後に、正直、自分自身もう日本代表のユニホームを着る資格がないプレーをしたと感じたし、チームとしても代表として相応しくないプレーをやってしまっていたので、もうああいうプレーだけは許されないと思っていた。あの試合の後は自分に対して怒りが凄かったです。けがで出られなかった人がいるなかで、ああいうプレーをしていたら申し訳ないというか、ダメだと思ったので、今日は自分の持てる力を出し切ることを考えていた」
日本は1次リーグでトルコ、チェコ、米国に3連敗し、2次リーグ進出を逃した。順位決定戦に回り、7日のニュージーランド戦は81-111で初の開幕4連敗。強化試合から課題にしてきた3ポイントシュートだけで54失点。エースと主将を欠く10人で懸命に戦ったが、日本の大会最多失点を喫し、渡邊は「相手も遊んでいたし、日本代表として恥をかいた」と悔しさをかみしめていた。
史上最強と期待されて臨んだW杯は5戦全敗で終戦。日本人2人目のNBAプレーヤーとなった渡邊は、かつてない重圧を抱えていた。
「今回、バスケ人生でもしかしたら初めてプレッシャーに負けていたかもしれない。正直、予選ラウンド突破は絶対にしないといけないと、自分自身にプレッシャーをかけていた。チェコに負けた後に、もうプレッシャーにやられて自分を見失っていたというか、自分を出せない状態だった。
ただ、今後もそういう状態になるもしれないし、NBAでプレーしてもそういうプレッシャーがある中で、そのプレッシャーにどうやって打ち勝つかというのをこの代表期間で学べたと思う。まだ精神的に弱さを改めて感じられたので、そういう部分は収穫かなと思います」
次は今秋開幕のNBA。代表選手たちは個人での戦いが始まる。渡邊は来年の五輪まで個の力を磨くことを誓った。
「次の五輪合宿が始まるまで、(集まる機会がないため)チーム力をアップさせるのは不可能。チーム力以前に海外選手に比べて個人の力が劣っていた。おとといの試合でも、気持ちが相手の方がハングリーだった。悔しい思いをして日本に帰るので、チームでもこの悔しさを忘れずに、まず個人としてレベルアップすることが次の五輪に向けて必要だと思います」
5試合で味わった悔しさは忘れない。立ち向かう心があれば、もっと強くなれるはずだ。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)