柔道GS東京に“異変”…五輪翌年でも会場に緊張感のワケ すでに熾烈なロス五輪代表争い
柔道のグランドスラム(GS)東京大会最終日が7日、東京体育館で行われ、男子66キロ級の阿部一二三(28=パーク24)が2年ぶり6度目の優勝を果たした。五輪連覇中の阿部は、厳しいマークにあいながら接戦を勝ち切る強さを発揮。準決勝では今年の世界選手権を制した武岡毅(26=パーク24)を12分を超える死闘で破り「階級最強」を証明してみせた。

グランドスラム東京大会
柔道のグランドスラム(GS)東京大会最終日が7日、東京体育館で行われ、男子66キロ級の阿部一二三(28=パーク24)が2年ぶり6度目の優勝を果たした。五輪連覇中の阿部は、厳しいマークにあいながら接戦を勝ち切る強さを発揮。準決勝では今年の世界選手権を制した武岡毅(26=パーク24)を12分を超える死闘で破り「階級最強」を証明してみせた。
「ホッとしています。一安心です」。阿部は、安堵の表情で言った。準々決勝で韓国選手に残り2秒から逆転勝ちして迎えた準決勝の相手は同じパーク24所属の武岡だった。互いに譲らずゴールデンスコア方式の延長に突入。最後は12分37秒、阿部が五輪王者の貫禄を示して技ありを奪って勝利した。
スタンドも静まり返る激闘だった。男子日本代表の鈴木桂治監督も「すごい試合。息ができないほど緊張感があった」と絶賛する好勝負。あと一歩まで阿部を追い込んだ武岡が涙をみせるほど、ともに最大の目標とする28年ロサンゼルス五輪に向けて負けられない試合だった。
2009年、国際柔道連盟のワールドツアー導入とともに始まったのがGS東京大会。毎年12月に行われるが、以前は五輪翌年の大会にここまで緊張感はなかった。16年リオデジャネイロ五輪まで、代表最終選考会は直前の4月に行われる体重別選手権と全日本選手権。半年前のGS東京で負けても、挽回するチャンスは残されていた。
しかし、20年東京五輪からは代表の早期内定が導入され、この大会の重要度も飛躍的に増した。全日本柔道連盟が発表したロス五輪代表選考基準でも、27年の世界選手権とGS東京の両大会に勝てば代表内定となる。
来年10月の世界選手権(バクー)も同様だ。今年6月の世界選手権と今大会で優勝した女子52キロ級の阿部詩(25=パーク24)や男子90キロ級の村尾三四郎(25=JESエレベーター)ら4人が代表に決定。武岡も優勝すれば代表に決まったが、阿部が阻止した形だ。世界選手権代表の座がかかっていたからこそ、緊張感あるギリギリの試合になったわけだ。
世界選手権とGS東京に勝ち続けることが、ロス五輪への確実で最短の道になる。世界選手権は男女とも2階級に2人の選手を出せるので世界の舞台でも代表争いは続くが、そこでも勝ち続けることだ。今年の世界選手権準々決勝で苦杯をなめて3位に終わった阿部も、その道を目指す。
阿部と武岡の男子66キロ級は、日本の得意階級。世界選手権は17年からの8大会連続で日本選手が優勝しているし、うち3大会は日本人同士の決勝だった。GS東京には開催国として日本選手4人が出場しているが、この階級では全員が表彰台に立った(3位2人)。代表争いが激しいからこそ「ロスへの最短ルート」から外れないことが重要になる。
阿部に敗れた武岡は「また(阿部に)一歩前に出られた。この差を詰めていかなければ」と巻き返しを誓ったが「まだ若い選手には負けない」と阿部は自信をみせる。「この階級では阿部一二三が一番強いということを証明できた。これを証明し続けたい」。五輪3連覇を狙うロスへ、最短ルートを駆け抜ける覚悟を口にした。2年半後のロス五輪、代表の座を巡る争いは、すでに始まっている。
(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)
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