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欧州強豪に完敗でもエースが見せた意地 男子ハンド日本・藤坂尚輝が8得点「最低限のことをやろうと」

日本ハンドボール界の新星、CB藤坂尚輝(23=大同東海)がスタンドを沸かせた。男子日本代表「彗星ジャパン」が20日、東京・代々木第一体育館でフランスの強豪パリ・サンジェルマン(PSG)と対戦。23-30で完敗したものの、藤坂は一方的な展開の中でエースとしての意地をみせ両チーム最多の8得点をマークした。

日本代表のCB藤坂尚輝【写真:中戸川知世】
日本代表のCB藤坂尚輝【写真:中戸川知世】

パリ・サンジェルマン ハンドボールジャパンツアー2025

 日本ハンドボール界の新星、CB藤坂尚輝(23=大同東海)がスタンドを沸かせた。男子日本代表「彗星ジャパン」が20日、東京・代々木第一体育館でフランスの強豪パリ・サンジェルマン(PSG)と対戦。23-30で完敗したものの、藤坂は一方的な展開の中でエースとしての意地をみせ両チーム最多の8得点をマークした。

 重苦しいムードを振り払い、再び日本代表への声援を呼び起こしたのは、藤坂だった。「日本の代表として勝たなければならない」という決意で臨んだPSG戦だったが、前半で9-19と大差をつけられる一方的な展開になった。

 代表招集辞退や欠場が相次ぐ中、パリ五輪代表の中で唯一出場した藤坂は「最初はよかったけれど、相手のプレーの強度が予想以上で思うようなプレーができなかった」と力なく話した。あまりにも大きな実力の差に、ファンも沈黙。ため息さえ漏れていた。

「あれだけ点を離されて、いいイメージが持てなくなっていた。気持ちの面で厳しかった」と藤坂。それは、スタンドのファンも同じだった。スタンドを見上げれば、日本代表の活躍を期待して集まった6566人の観衆。ズルズル負けてしまっては、期待を裏切ることになる。

「これだけ大勢の人が見に来てくれることはない。見ている人を楽しませないといけない。日本代表として、最低限のことをやろうと思った」。たとえ負けても、ファンに「また来たい」と思ってもらえることが日本代表として、プロとして大切。それが、藤坂の思いだった。

 後半15分過ぎから「藤坂劇場」が始まった。味方のポストを外に出し、相手のディフェンスを左右に引っ張って中央にスペースを作った。穴があれば、それを突くのは藤坂の得意技。高いPSGの壁にできたギャップを最大の武器であるスピードでかわしてシュートを放った。

 多彩なシュートで4連続ゴール。さらに、相手のゴールをはさんで2ゴール。藤坂の右腕が動くたびに、スタンドが沸いた。前半は止められて苦しんだシュートだったが「(調子が)上がっていって、持ち味が出せた」と話した。

 もちろん、大量リードの相手は新シーズンに向けての新しい戦術を試すなど、ほぼ勝敗が決してからの活躍。藤坂自身も「遅すぎた」と反省した。それでも、試合を終わらせることなくファンの興味もつなぎ留めた。終わってみれば前半と合わせて8得点。両チーム最多だった。

 相手LBプランディからはGK岩下とともに「印象に残った選手」として挙げられた。さらに、藤坂が「好きで、よく真似をしている」というCBスタインズからも「金髪の39番が、とても印象的だった。ディフェンスでついていくのが難しかった」とそのスピードを絶賛された。

 もっとも、本人は司令塔として攻撃が機能しなかったこと、前半に離されたことを猛省。8得点を「評価できない」とし「勝ち負けの世界なので、誰が何点取っても負けたらダメ」と、エースとしての自覚を持って話した。

 ジローナ監督も厳しかった。「決まらなかったシュートが5回あり、3回ボールを失った」と8得点だけをほめることはなかった。「改善する余地はある。特にディフェンス。チームを率いる能力も求められる」とも言った。

 厳しい言葉とともに「彼にはクオリティーがある。潜在能力も高い」と高評価。期待が大きいからこそ「改善するには、今日のような試合を毎週する必要がある」。ロサンゼルス五輪に向けて日本代表のエースとして成長するために、早い段階での欧州移籍を期待した。

 日体大3年だった2年前、PSG戦で初めて代表のユニホームを着て鮮烈な活躍をみせた。それが評価されて昨年のパリ五輪代表に「サプライズ選出」。今年1月の世界選手権を経験して日本の新しいエースに成長した。

 プレーとともに精神的にも成長。「日本のハンドボールを盛り上げたい」という思いが、この日の大活躍にもつながった。「目標はロサンゼルス五輪出場。予選(1次リーグ)を突破してメダルを目指したい」。試合後のインタビューで大勢のファンの前に立った藤坂は、日本代表のエースとして成長を誓った。

(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)


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荻島 弘一

1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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