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惜敗・張本美和、行き場のない怒りと涙 早田のメディカルタイムアウトに理解も…コーチの治療は「すごく疑問」「審判から説明なく…」

早田のメディカルタイムアウトに理解も「自分のコーチが治療したこと」に疑問

 早田に続いて、張本は涙をぬぐって取材に答えた。「負けたのは悔しいですし、しっかり準備していた試合だったので。2ゲームを勝ち切れたのは成長かなと思います」と気丈に言葉を続けたが「ファイナルゲームまで持ち込めてリードしていたのですが、いろいろとあって」と話したころで目に涙が浮かんだ。

「メディカルタイムアウトは仕方ない。相手にも私にも権利はあるので」と、何度も繰り返した。メディカルタイムアウトを取ったこと自体には理解も示したし「意見もない」と言った。それでも思いは複雑。「試合としては悪くなかったけれど、負けは負け。悔しいけれど、結果は変えられない。いろいろなことで頭がいっぱいで、他のことは考えられない」と涙を浮かべながら言った。

 それでも「自分としては、疑問点はたくさんあります」と本音も明かした。当初は「言い訳になるから」と内容までは口にしなかったが「一番の疑問は?」と聞かれると「けっこういっぱいあるんですけど」と言ってしばらく沈黙した後、溜まっていたものが涙とともに堰を切ったように噴出した。

「すごく疑問なのは、大会の方ではなく日本チームの自分のコーチが治療したこと。アドバイスだってできるかもしれない。自分もメディカルタイムアウトをとって『医者です』と言えば、コーチでもある父に来てもらえたのかと。そんなまねはしたくないですけど」。言葉を詰まらせ、行き場のない怒りを吐き出した。

 それだけではない。「審判から説明がなく、聞いたけれどちゃんとした答えが返ってこなかった。相手が座っているので、自分も座ったけれど」と対応への不満を口にした。「4-2になったタイミングでというのもおかしいし、治療した後のプレーで『本当に痛かったのかな』とも思いました」。涙とともに困惑の思いがあふれた。

 それでも最後には「そういうことに影響されて自分が悪い。負けは負けです」と精一杯に平静を取り戻すように言った。

 第4ゲームを競り合いの末にとり、第5ゲームもリード。「いける」と思った瞬間の予期せぬ中断で勝機を逃した張本。やり場のない憤りや悔しさはあるだろうが、貴重な経験をしたのも事実。張本は「切り替え、切り替え、そう自分に言い聞かせながらやっていきたい」と努めて前向きに言った。悔しい敗戦で、17歳の次世代エースはさらに強さを増すはずだ。

(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)

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荻島 弘一

1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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