公園は「子どもにとっての逃げ場所」 川崎の元NBA選手、プロ入り直後から慈善活動に熱心な理由
バスケットボールBリーグの川崎ブレイブサンダースは、武蔵小杉駅から徒歩3分の場所で小学生から高校生までのすべての子どもが無料で利用できる施設「THE LIGHT HOUSE KAWASAKI BRAVE THUNDERS」(ザ・ライトハウス)を運営している。バスケもできる「こどもの居場所」に2月24日、Bリーグが推進する「B.HOPE」活動の一環としてミニゴールが寄贈されたが、その交流イベントに参加したのが今季からチームでプレーするアリゼ・ジョンソンだった。

Bリーグ川崎アリゼ・ジョンソン、インタビュー前編
バスケットボールBリーグの川崎ブレイブサンダースは、武蔵小杉駅から徒歩3分の場所で小学生から高校生までのすべての子どもが無料で利用できる施設「THE LIGHT HOUSE KAWASAKI BRAVE THUNDERS」(ザ・ライトハウス)を運営している。バスケもできる「こどもの居場所」に2月24日、Bリーグが推進する「B.HOPE」活動の一環としてミニゴールが寄贈されたが、その交流イベントに参加したのが今季からチームでプレーするアリゼ・ジョンソンだった。
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28歳のジョンソンは、NBAでプレーしていた当時から慈善活動に積極的だったことで知られ、2018年には自らの名前を冠した財団も立ち上げ、故郷の米国ペンシルベニア州ウィリアムズポートを中心にさまざまなサポートを行っている。こうした活動の裏には、どんな思いがあるのか。ジョンソン本人に話を聞いた。(取材・文=青木 美帆)
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「何も考えなくていい場所。『生きている』ってことすら忘れてバスケットボールに没頭できる場所かな」
アリゼ・ジョンソンのかつての“ホーム”は、ペンシルベニア州ウィリアムズポートにある粗末なバスケットボールコートだった。
7人兄弟の長子で、一番下の妹とは13歳差。両親はジョンソンが8歳の頃に離婚した。幼い子どもたちの世話に追われる母の手助けをし、家の近くにある公園のコートでバスケットボールに打ち込む。それがジョンソンの日常だった。
「弟たちを学校に送り迎えして、買い出しに行ったり、料理をすることもあった。母が再婚するまでの4年くらいは、2人で彼らの面倒を見ていたよ。母は僕らをしっかり育ててくれているから助けてあげなきゃと思っていたし、それが一番上の子どもとして当たり前だと思っていたから、ものすごく大変だったというふうにはとらえていない。有意義な時間だった」
ジョンソンはこのように当時を振り返るが、一般的には家や弟妹のことなど何も考えず、自分本位に遊びたい年頃。弟妹を家に送り届け、公園でバスケットに興じる日暮れまでのわずかな時間は、自分が家族を支える存在であることを忘れられる、何にも代えがたい大切な時間だった。
このような幼少期の経験から、ジョンソンはローカルコミュニティの子どもたちを支援する活動を続けている。
2018年、NBAドラフトでインディアナ・ペイサーズから指名を受け、幼い頃から憧れていたNBA選手になった数か月後、自身の母校を含む近隣の複数のハイスクールにバスケットボールシューズをプレゼントした。さらには数か月後、NBA入りをきっかけに創設した財団「アリゼ・ジョンソン財団」を通じて、少年時代を過ごした公園を改修し、バスケットボールコート3面を新たに寄贈した。
「公園もコートも、僕が使っていた頃から状態があまり良くなかったからね。NBA規定のフルコートを作って、リングや遊具も新しいものにした。公園は子どもにとって遊ぶ場所だけでなく、家からの逃げ場所というか、心の健康を保つ場所でもある。自分がNBAまでたどり着けたら、恩返しのために公園を作り直したいとずっと思っていたんだ」