競泳・日本選手権

　競泳の日本選手権最終日が23日、東京アクアティクスセンターで行われ、男子1500メートルで17歳の今福和志（枚方SS）が14分50秒18で日本新記録で優勝した。400メートル、800メートルに続く今大会長距離3冠で、7月の世界選手権（シンガポール）の日本代表も内定。男子長距離界に現れた新星は、OWS（オープンウォータースイミング）との「二刀流」で28年ロサンゼルス五輪を目指す。

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　今大会一番の興奮がプールを包んだ。競泳で最も距離が長い1500メートル。予選を1位で通過した今福は、スタートから飛び出した。すぐに独泳状態になると、スタンドから日本新記録を期待する「ゴー、ゴー」の合唱。「日本新ペース」の場内アナウンスに、観客の手にしたスティックバルーンが打ち鳴らされた。

　圧倒的な強さだった。最初の50メートルを26秒85のトップで入ると、29秒29、29秒68、29秒37と正確に29秒台のラップを刻む。決勝レース最年少の17歳が、力みのない大きな泳ぎで大学生と社会人たちを置き去りにした。1000メートル過ぎにラップが30秒台に落ちたが、最後の50メートルはピッチを上げて28秒でクリア。山本耕平が持つ14分54秒80の日本記録を5秒近く縮めてゴール板をたたいた。

　ゴーグルを外してタイムを確認した今福は「11年ぶりの日本記録更新というのはうれしい。ただ、狙っていたのは50秒を切ることだったので残念」と悔しがった。それでも、400メートルに続いて世界選手権出場を決めて「日本の長距離は世界に遅れているので、頑張ってレベルを上げていきたい」と言い切った。

　今福の言葉通り、日本新を出してなお世界が遠いのが1500メートル。14分40秒を切らないと世界のメダルは狙えない。だからこそ、伸び盛りの17歳は「これから何度も記録を更新していきたい」と話した。

　プールと海でロスを目指す。自由形長距離とともに取り組むのは海などを泳ぐOWS。五輪で争うのは10キロで、1500メートルとはケタが違う。練習は1日8000メートル、多い日は1万メートルを超える。「短い距離がダメで長い距離ばかり泳いでいたら、なんか感覚がマヒしちゃってます」と言って笑った。

　自由形長距離とOWSの二刀流は珍しいことではない。特に欧州の選手の中には両方をトップレベルでこなす選手もいる。パリ五輪男子1500メートル銀メダルのパルトリニエリ（イタリア）は、東京五輪では800メートルで銀、OWSで銅メダルを獲得。22年世界選手権では両種目で世界一に輝いている。

　コースロープのないOWSでは、他の選手との駆け引きが重要。「ライバルの息遣いを感じながら泳ぐのは貴重な経験になる。プールでの泳ぎにもいい影響がある」と太田伸コーチ。「違う練習もしなければいけないし、長い距離を泳ぐのは大変だけれど、それも泳ぎには生きています」と今福は笑った。長距離のプール練習は単調になりがちだが、海を泳げばリフレッシュにもなる。

　昨年9月、世界選手権代表選考を兼ねたOWS日本選手権は1時間55分36秒9で3位。2時間近く泳いで2位との差は4秒2でOWSでの世界選手権出場は逃したが、プールでの出場権は400メートルに続いて1500メートルでも手にした。「このタイムで満足はしていない。夏までにもっと記録を伸ばしたい」。OWSと自由形長距離で28年ロサンゼルス五輪を目指す17歳の挑戦が始まった。