羽生結弦さん「ちょっと今、放心してる状態」 単独ツアー完走、万感の思い「心と正義を信じて、まっすぐ進んでいきたい」【囲み取材全文】
![自ら制作総指揮。演出、照明などにもこだわり抜いた【写真:(C)Echoes of Life Official】](https://the-ans.jp/wp-content/uploads/2025/02/09204737/W2_250207_3238.gif)
孤独に対し「大丈夫だよっていう気持ちで表現したつもり」
――「Mass Destruction」について。自信たっぷりで挑発するような振りもある中、あの時のNova(主人公)の心境はどういったものなのか。
羽生「あの曲自体が戦闘曲なんですよ。音をまといながら音を武器として戦っているっていうか、何て言うんですかね……。ペルソナのゲーム的にはシャドウっていう敵がいるんですけど、自分は音を使いながら、自分のペルソナを召喚して戦うっていうイメージでやってます。それを一般向けにどうやって話せばいいんだろうと思ったんですけど(笑)。音をまといながら、ダンスをしながら、憎悪のいわゆる負の感情みたいなものに対して、喜びの感情とか楽しいみたいな感情とかで押し潰す感覚でやってます」
――ダニーボーイについて。埼玉公演では安堵感のようなものを感じた。今日はその前の2曲が力強く感じた分、静けさを感じた。どんな気持ちだったのか。
羽生「今思い出してるんですけど、どんな気持ちだったかな……。そのときは必死で。とにかく何か、全身で祈るっていうイメージでずっと滑ってました。その祈りがダニーボーイのいわゆる原点にある、死者への弔いっていう意味の祈りもあるし、ここに来てくださっている会場の皆さんの希望への祈りであったりとか、僕自身の個人的な幸せへの祈りだったりとか、作ってくださってるスタッフへの祈りだったりとか。本当に『ゴチャッ!』っていろんなものが混ざってしまってはいるんですけど、一緒くたに音とともに祈るっていう気持ちで、ただひたすら祈ってました」
――浄化した憎悪への祈りもあったのか。
羽生「あのシーンって、あの世界の中で生命がほとんどなくなってしまった中で、やっとその芽吹きが与えられることに気がつき始めるっていうところで。自分の周りに命が宿っていくことへの祈りというか。その一つ一つの命がどうか育ってくれますように、みんな生きてくれるようにっていうことへの祈りがNovaとしては一番強かったです。最後は『みんな生きて』って言ってました」
――アイスストーリー第3弾まで共通して「孤独」がインスピレーションの源になっていると思うが、作品を作るうえで比類のない規模での協力があり、作品の中でも孤独に対する答えが用意されている。経験を重ねてきた中で「孤独」は自分の中でどういう位置づけになったか。
羽生「あんまり孤独とは思ってないんですよね。ただ何か、戦わなきゃいけないときだったり、もちろん人間誰しもが持っていることだと思うんですけど、全てを共有できるわけではない。とても悲しいことだけれども、自分の苦しみだったり喜びだったりを全部共有できるわけじゃないじゃないですか。それってみんな孤独だなって思ってて。
でも、だからこそ人間は言葉というものを使うし、文字を使うし、それをNovaで表現したかったのは、たとえその世界で1人だったとしても、文字や記録や音とか、そういうものがある限りは1人じゃないんだっていうことを表現したつもり。僕が孤独だとかっていうのは最近は思ってないんですけど、ただ皆さんの中にあるちょっとした孤独、みんなが気づいてくれない孤独みたいなものに対して『いや、大丈夫だよ』っていう気持ちで表現したつもりです」
――シーズン中の試合と同じように、公演を重ねるごとに素晴らしいものができ上がってきた。今回の公演を経て、また何か超えられたなと思うものはあるか。
羽生「新しいトレーニングも始めてみて、可動域を上げるとか、単純に柔軟性が上がるとかっていうだけじゃなくて、使える体の動きとどれだけリカバリーを早くできるかっていうこと。あとは何だろう、自分の特徴であるしなやかさ、美しさみたいなものへの磨き方みたいなことを、広島の直前ぐらいから練習を始めてるんです。それがやっと今回、まとまってくれたなっていう感覚で今います。これからまたどんどん変わっていけるんだなっていう感触、実感が今はあります」
(THE ANSWER編集部)