羽生結弦さん「ちょっと今、放心してる状態」 単独ツアー完走、万感の思い「心と正義を信じて、まっすぐ進んでいきたい」【囲み取材全文】
フィギュアスケート男子で2014年ソチ、18年平昌と五輪連覇を達成しているプロスケーター・羽生結弦さんが出演・制作総指揮するアイスストーリー第3弾「ICE STORY 3rd -Echoes of Life- TOUR」が9日、千葉・ららアリーナ東京ベイで千秋楽を迎えた。「命」「生きること」をテーマに、昨年12月から埼玉、広島、千葉を回った。公演後には取材対応。「これからまたどんどん変わっていけるんだなっていう感触、実感が今はあります」とアイスショーを通じ、成長を感じていた。
![「Echoes of Life」千秋楽で演技する羽生結弦さん【写真:(C)Echoes of Life Official】](https://the-ans.jp/wp-content/uploads/2025/02/09204730/f6d99c4a43a4915e2ad669089edc4594.gif)
「ICE STORY 3rd -Echoes of Life- TOUR」が千秋楽
フィギュアスケート男子で2014年ソチ、18年平昌と五輪連覇を達成しているプロスケーター・羽生結弦さんが出演・制作総指揮するアイスストーリー第3弾「ICE STORY 3rd -Echoes of Life- TOUR」が9日、千葉・ららアリーナ東京ベイで千秋楽を迎えた。「命」「生きること」をテーマに、昨年12月から埼玉、広島、千葉を回った。公演後には取材対応。「これからまたどんどん変わっていけるんだなっていう感触、実感が今はあります」とアイスショーを通じ、成長を感じていた。
開場の14時30分を前に、ららアリーナ東京ベイにはファンが大挙。海外から訪れた観客もおり、グッズ売り場は長蛇の列ができていた。自らが制作総指揮する壮大なアイスショー。氷上の演技で魅せたのはもちろん、スクリーンに流れる映像もまるで羽生さん主演の映画のよう。音響、照明にもこだわりを詰め込んで約2時間半、大いに観客を沸かせた。
アンコール前、羽生さんは目に涙を浮かべて深々と一礼。「僕が執筆して、そこから始まる僕の頭の中、気持ち、心臓の中、魂、そんなものを全て詰め込んだ本当に大変な作業がたくさんあった」と感極まった様子で語り、「全てのスタッフに大きな拍手をお願いします。ありがとうございました」と支えてくれたスタッフに感謝した。
公演後には囲み取材に応じた。以下、一問一答。
――ツアー完走。今の気持ちは。
羽生「とにかく頑張ったなということと、やっぱりこのアイスストーリーというものに関わってくださっている方々の規模が、本当に類を見ないぐらい多くの方々が関わってくださって、僕のためにどれだけの方が動いてくれてるのかっていうことに対しての感謝の気持ちでいっぱいです」
――千秋楽。制作総指揮を務めたが、自分の中の完成度は。
羽生「もう、これ以上ないなって言う出来で締めることもできたので、ちょっと放心状態ではあるんですけど、とにかく……何て言うんですかね。言葉とか文字だけでは僕は表現しきれないし、このアイスストーリーというものは、スケートだけでもやっぱり表現しきれない唯一無二のものだと思っている。今日の演技と演出と物語がこうやって映像で残ったり、見に来てくださった方々の記憶に残ったりしてくれるのが本当に嬉しいなっていう気持ちでいっぱいです」
――バラード1番が素晴らしかった。ショーのリンクは暗く狭いが、今日はどう臨んだのか。
羽生「本当に最初からかなり苦戦して、改めてショートプログラムの旧ルール、旧採点ルールの中のショートプログラムで、後半に2回ジャンプを跳ぶ。それがトリプルアクセルと4回転―3回転というジャンプっていうものの難しさを改めて感じました。フリーとはまた違う緊張感、そしてフリーとは違って回復する余地がないのがショートプログラムの特徴で、非常にいろんなものが詰まっているからこそ、フリーよりも難しいんだなということを、今回ツアーを通して改めて感じました。
ピアノの前に4曲ですかね。4曲やってて、既に『あー、つらいな』って思いながら出ていく難しさと、これは僕の希望だったんですけど照明つき、そしてまた会場によってリンクサイズが変わるということもあって、非常に調整が難しかったですが、本当に氷の職人さんも含めて、皆さんが一生懸命やってくださったおかげで何とかできました」
――まだ終わったばかりだが、次への構想はあるか。
羽生「ないです。(構想は)ゼロです(笑)。とにかくちょっと今、放心してる状態でちょっと頭が上手く回ってないかもしれないんですけど、とにかくこうやって皆さんが集まってくださるのもそうですけれども、『なんて特別なんだろうな』っていうことをしみじみと心に染み込ませながら、今というときを過ごしています」
――未来に向けて、どんな生き様を見せていきたいか。
羽生「僕がこの物語を執筆して、実際ツアーを完走して、自分自身の考えが深まったことの一つなんですけど『未来なんてやっぱ誰もわかんないな』っていうことが、このツアーを滑りながら一番自分の心の中に残ったものです。それは北京オリンピックもそうでしたけれども、どんなに努力してもやっぱ『報われないな』って思うこともあるし、どんなに一日一善をして、どんなにいいことを繰り返していたとしても、不幸なことが起こってしまうのが未来だし。だからこそ簡単に『こんな生き様』とは言えないんですけどでも、とりあえず生きている今を、自分の心と自分の正義を信じて、まっすぐ進んでいきたいなっていう気持ちはあります」