パリの悔しさから「逃げなかった」村尾三四郎 4年後に向けた復活V、常に考えた「どうしたらもっと…」
五輪後に「毎日の細かい作業から逃げなかった」
「日々の稽古、トレーニングは決して楽しいものではない」と本音を明かす。「毎日繰り返していく作業の中で自分と向き合い、できたとかできなかったとかを考えるのは大変」と話し「大きな大会後は、細かい作業が怠りがちになる。そこで勝つために何が必要かを考え、稽古をする。そういう作業の繰り返し」と振り返った。
「すべてを忘れて、他のことをやったり、リフレッシュする方法もある。決して間違いだとは思わないけれど、自分はそういう作業から逃げなかった」と振り返った。「大会前は勝つための稽古だが、大会後は自分の柔道を見つめ直して新しいこともできる。それがリフレッシュにつながった」と説明した。
照準を今大会に定めたのは「ロス五輪に向けて、勝っておきたい大会だった」からだが、柔道をより広めたいという思いもあった。「五輪で初めて競技を知った人たち、生で見たいと言ってくれた人たちに、柔道の魅力を感じ取ってもらえればと思った」。言葉通り、切れ味鋭い技でパリ五輪での活躍を再現した。
次のロス五輪まで4年あるが、近い目標は来年の世界選手権。「目の前の試合を一つひとつ勝っていきたい。その先にロスがある」。この日準決勝で対戦した田崎や世界ジュニア連覇で今大会3位に入った19歳の川端倖明(国士舘大)ら国内のライバルもいる。「まだまだ戦いは続く。気を引き締めていきたい」とも言った。
日本人の父と米国人の母の間にニューヨークで生まれた。「三四郎」の名から柔道の「姿三四郎」を連想するが「実は柔道とは関係ないんです」と村尾。父が「日本人らしい名前を」と語感からつけたのだという。それでも、村尾は柔道を選んだ。
「どうしたらもっと強い柔道家になれるか、日々考えながらやっていきたい。柔道家として高みを目指したい」。ロス五輪の金メダルもゴールではない。村尾は誰よりも「柔道家」らしく真摯に、すべてをかけて柔の道を突き進む。
(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)