野球日本の金メダルの道を断った豪州の衝撃 当事者が振り返る04年アテネ五輪「ちょうどその頃は…」
豪州を進化させる日本野球…快挙再びと信じられる理由
当時のチームは、予選リーグでも日本に9-4で圧勝している。なぜ、このような快挙を達成できたのか。ロイド氏は「ちょうどその頃は、メジャーを経験していたり、その途上にいるような最高の選手たちがいたんだ。当時のチームはかなり選手が揃っていた。残念ながら金メダルを獲得することはできなかったが、日本を倒して決勝に進んだことは一生忘れない経験だった」と、選手の育成サイクルが最高の形で噛み合っていたとする。今回の代表監督で、ブルワーズの主力打者だったデーブ・ニルソンが中軸に座り、投手陣にものちにNPBや大リーグでプレーする選手が揃っていた。
それから20年、豪州代表は再びいい流れをつかみかけている。当時の記憶が残るコーチ陣が、若い世代に技術とハートを植え付けている。「野球はこの20年で大きく変わったよ。よりデータ分析を重要視するようになった」というロイド氏。自身とニルソン監督は「少しオールドスクールな人間だと思うよ」と笑うが、その下の世代にあたるコーチはデータも駆使して、豪州野球の近代化に努めている。「オールドとニューのコーチが一緒になっているんだ。将来的に成功を生み出すために、いい混ざりあいだと思っている」。新たな快挙は、ひょっとしたらこの大会で達成されるかもしれない。
ロイド氏やニルソン監督のように、豪州から大リーグに飛び出し、一流と呼ばれる数字を残す選手が減っている現状も、ロイド氏は「タイミング」だと意に介さない。今回の代表には、豪州出身として初の全米ドラフト1位指名を受けたトラビス・バザーナ(ガーディアンズ)も加わっている。「メジャーにたどり着こうとしている彼らを見てみてよ。またいい流れが、近いうちに起こることを願っているよ」。球界あげての努力が報われる日は近いと見ている。
豪州の野球は、地理的に近い日本の影響も受けながら発展してきた。今年もまもなく開幕するウィンターリーグに、NPBの5球団から計15人が参加する。ロイド氏にはメルボルン・エイシズのベンチコーチという顔もあり、日本野球との交流が進むことには感謝しかないという。
「助けにしかならないよ。日本でスーパースターになる若い選手たちを迎えられるのは素晴らしいこと。日本式のピッチング、異なるタイプの投手を見られるのはオーストラリアの選手にとって素晴らしいこと」。今大会では、注目される初戦で日本と当たる。恩返しの1勝があっても、決しておかしくない。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)