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陸上界に現れた逸材16歳・久保凛に漂う大物感 狂いかねない重圧も「感じない」、1年前の夏から隠さない夢

活況の陸上界に新たな逸材が現れた。6月30日まで行われた日本選手権。女子800メートルを制したのは、16歳の高校2年生・久保凛(東大阪大敬愛高2年)だった。

日本選手権女子800メートル決勝、田中ら後続を引き離してゴールした久保凛【写真:奥井隆史】
日本選手権女子800メートル決勝、田中ら後続を引き離してゴールした久保凛【写真:奥井隆史】

日本選手権で800メートル制覇した久保凛 田中希実も脱帽する落ち着きと「圧倒的な自信」

 活況の陸上界に新たな逸材が現れた。6月30日まで行われた日本選手権。女子800メートルを制したのは、16歳の高校2年生・久保凛(東大阪大敬愛高2年)だった。

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 雨模様の新潟・デンカビッグスワンスタジアムに衝撃が走った。30日の決勝、東京五輪1500メートル8位入賞の田中希実のほか、卜部蘭、川田朱夏、塩見綾乃、池崎愛里というこの種目の優勝経験がある4人が揃うスタートラインに久保は立った。そして、1周目は2、3番手につけ、ラスト1周のバックストレートで田中が前に出ようとすると、合わせてスパート。ここで一気に先頭に立つと、先輩ランナーを置き去りにして失速することなく、自己ベストの2分3秒13で駆け抜けたのだ。

「前半から先頭に出て、リズムを作りたかったけど、最初の100メートルで塩見さんが前に行っていた。落ち着いて付いて、ラスト250からスパートをかけようと思っていた。自分のペースで勝ち切れた。率直にうれしいです」

 高校生が800メートルで日本女王になるのは8年ぶりの快挙。にもかかわらず、本人はどこまでも冷静だった。

 久保は2008年1月20日生まれ、和歌山・串本町出身。小学生時代はサッカ ーに打ち込み、中学から本格的に陸上を始めた。東大阪大敬愛高に進み、昨夏の全国高校総体(インターハイ)は1年生ながら優勝を飾った。今年4月の金栗記念では田中に勝利。5月の静岡国際でU18日本新を出し、木南道孝記念も制するなど、トップ選手を抑えてグランプリシリーズ3連勝中だった。

 日本代表MF久保建英をいとこに持つことで有名。果たして、初の日本選手権でどこまでやれるのか。注目は高かったが、プレッシャーに感じるどころか、パワーに還元しているかのような強心臓ぶりを発揮した。そして、その大物感はレース以外にも表れている。

 前日に行われた予選。田中、卜部らと同組となった久保は臆せず、スタートから先頭に立つと、一度も譲ることなく先頭でフィニッシュ。あくまで決勝進出を目指すレースとはいえ、タイムの2分3秒60は大会の予選歴代1位という快挙だった。彼女はレース後の囲み取材でこんなコメントを残した。

「(卜部、田中ら)憧れの選手と走ることができるのはうれしいし、憧れの選手より早くゴールできたことは自信になる」と振り返り、注目されることについて「緊張はするけど、プレッシャーは感じていない。注目を浴びることもあまり意識していないし、どっちにも感じないです」と言ってのけた。

 多感な10代。周囲の目線や期待を重圧に感じ、パフォーマンスが狂わされる選手は少なくない。にもかかわらず、「どっちにも感じないです」と平然としていられるメンタルの強さは、アスリートとして競技力ともう一つの武器になり得る。一緒に走った田中に「落ち着いたレース運びというか、他の選手に左右されずに、自分のレースをされているのかなと感じた。圧倒的な自信があるからこそできる部分」と言わしめた。

 彼女の名前が一躍、陸上界で知られたのは昨年8月のインターハイ。800メートルで優勝した。当時は「1年生の夏はインターハイに出場することが目標だったので」と想像を超えるステップに自ら驚き、「インターハイは来年も再来年も良い成績を残せるように」と話していたが、その前に日本女王になってしまった。

 幼少期に会ったこともあるいとこの久保建英について「世界で活躍している姿を凄いなと思うので、自分も将来、陸上で世界で活躍する選手になれたら」と言い、「夢は五輪に出場すること。いろんな種目に挑戦して自分に合った種目を見つけていきたい」と語っていた。その夢は20歳になる4年後に、もう叶えてしまいそうだ。

(THE ANSWER編集部)


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