日本バスケ史に名を刻んだ“キング” 敵地に舞った207cmの巨体、「一生の思い出」で現役生活に幕
人生初の胴上げは「一生の思い出として残っていく」
川崎のラストプレーが近づくなか、川崎はファジーカスの「らしい」プレーを1つ用意してきた。エンドラインからのスローインを受け持ったファジーカスがロングパスをジョーダン・ヒースに通し、相手のディフェンスが追ってきたところでヒースがボールを外に弾き出し、後をついてきた選手が3ポイントシュートを狙う……。これまたファジーカスのお家芸であり、川崎はチーム内でアメリカンフットボールNFLの名選手になぞらえて「ブレイディ」と呼んでいたという。ラストプレーを、川崎・佐藤賢次ヘッドコーチはこう解説する。
「練習からやっていて、いつも狙っているプレーでした。実を言うと、もう少しニックには待ってほしかったんです。もう少し落ち着いて、ジェイ(ヒース)が前を走るまで待ってほしくて。タイミング的には(篠山)竜青ではなく、(藤井)祐眞だったんです。でも、打ちきってくれたので、良かったと思います」
篠山のシュートは惜しくもリングに嫌われ、川崎は79-87で敗戦。シーズン最終戦を勝利で飾ることは叶わなかった。
試合後、横浜BCによるファジーカスへの花束贈呈のセレモニーが行われ、フォトセッションを終えると、篠山がファジーカスに目配せをして、両チームの選手たちが集まってくる。ファジーカス自身が「経験したことはなかった」という胴上げが行われ、207センチ・114キロの巨体が3度宙を舞った。
「竜青が僕のところに来て『日本の文化なんだけど、胴上げ、する?』と伝えてきて。見たことはありましたけど、自分がそこでやることになるとは思っていませんでした。僕の体が上がったのは鎌田選手(裕也/197センチ・115キロ)がいたからこそだと思うし、彼が力強くて、大部分の重さを支えてくれたからだと思います(笑)。妻がこの瞬間の動画も撮っていたそうなので、一生の思い出として残っていくのかなと思っています」
近年の日本バスケを、間違いなく一段と華やかな存在に引き上げたであろう「大巨人」ファジーカス。これからの長い人生の中で、再び日本バスケ界に巡り会うタイミングが訪れることを、今から願ってやまない。
(荒 大 / Masaru Ara)