高校バスケ界の名将が28年の監督生活に幕 個性派集団・市船を率いた信念とは?
個性派集団・市立船橋を率いた名将の信念
髪の毛をきっちりセットしたリバウンダー。速攻の先頭を猛然と走る巨漢センター。194センチのポイントガード。ほとんど言葉をかわさないキャプテンと副キャプテン……。近藤監督が率いた市立船橋は実に個性豊かな選手が多かったが、それでも1つのチームとしての調和がとれた、不思議なチームだった。問題児も多々いたが、1つひとつのプレーに真摯に向き合い、泥臭い仕事に手を抜く者はまずいなかった。
近藤監督は指導者人生を振り返る中で、そのヒントを話してくれた。
「大切にしてきたことはずっと変わらないんじゃないかな。普段の生活態度から気を配ること。選手や時代に合わせて声のかけかた、タイミング、トーンを考えること。そうやって日々意思疎通をとらないと、試合中のわずかな言葉で流れを変えることはできないと思うんです。やんちゃな子に対しては、その子と一緒になって悩みました。それこそ毎日その子のことを考えていましたよ。明日はどう話しかけよう、どう目を合わせよう…。教員ですから、どうしてもそういうところに目が行ってしまうんです」
「余計なことを考えるところがあるから」と、この試合は自身にとってのラストゲームだということを考えないようにしたという。しかし、タイムアップまで5秒を切ったあたりで初めてコートから視線を切り、ぼんやりと遠くを見つめた。
試合後には「監督業を離れることにさみしさや未練はないんです」ときっぱり断言したが、もしかしたら、そのわずかな時間だけは、28年分の思いを噛みしめていたのかもしれない。
(青木 美帆 / Miho Aoki)