ブダペスト世界陸上

　ブダペスト世界陸上で観る人を笑顔にするスポーツマンシップが世界で話題を呼んでいる。22日（日本時間23日）に行われた男子800メートル予選、自動的に準決勝進出が決まる3着以内を確信した1着選手が走りながらゴール前で2着選手に手を差し出し、ハイタッチを交わした。その様子に、中継した米国の実況席も笑顔とともに称賛の声が上がった。

　まさかの場面は予選最終7組で起きた。レースはラストスパートで上位が絞られ、最後の直線で先頭を走っていたマルコ・アロップ（カナダ）は残り20メートルあたりでスピードを緩め、突然、振っていた右手を隣に差し出した。そこにいたのは2着のシモーネ・バロンティニ（イタリア）。バロンティーニは驚きながらも笑顔でハイタッチを返し、さらに後ろにした3着ヤニス・メザニ（フランス）も健闘を称えるようにバロンティニの肩にタッチした。

　そのまま3人はゴールを駆け抜け、アロップが1分45秒05で1着、バロンティニが1分45秒21で2着、メザニが1分45秒30で3着で、そろって準決勝進出を決めた。米放送局「NBC」のストリーミングサービス「ピーコック」中継ではハイタッチの瞬間に爆笑が起こり、実況のリー・ディッフィー氏は「マルコ・アロップがレースを完全にコントロール。バロンティニに『よくやった』と言う感じで手を出しました」と伝えた。

　2012年ロンドン五輪400メートル女王で、2004年アテネ五輪から3大会連続で女子マイルリレーで金メダルを獲得したサーニャ・リチャーズロス氏が「彼はハイタッチしてましたね。とってもクールです」と言えば、2000年シドニー五輪男子100メートル銀メダリストのアト・ボルドン氏も「ハイライト動画になりますよ。とても素敵な振る舞いですね。『僕は準決に進出する。君もようこそ』って感じでした」と解説陣2人が絶賛した。

　リチャーズロス氏はさらに「最高ですね。この仲間意識が大好きです。なかなか見られない瞬間ですよ。十種競技などでは見られますけれど、短中距離ではないですよね」と珍しいシーンに胸を打たれた様子だった。