7.25世界戦へ会見

　ボクシングのWBC＆WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチが25日、東京・有明アリーナで行われる。22日は挑戦者の井上尚弥（大橋）と2団体統一王者スティーブン・フルトン（米国）らが、神奈川・横浜市内のホテルで公式会見に出席。フルトン陣営は過去の試合で見られた井上のバンテージの巻き方に不服を示し、会場を騒然とさせた。ルール上でも何の問題もなく、井上陣営は「意味がわからない。ずっとこれでやっている」と主張した。戦績は30歳の井上が24勝（21KO）、29歳のフルトンが21勝（8KO）。試合はNTTドコモの映像配信プラットフォーム「Lemino」で独占無料生配信される。

　本気なのか、陽動作戦なのか。フルトン陣営が仕掛けた。王者の質疑応答が終わり、司会者が挑戦者の井上に話を振ろうとした時、ワヒード・ラヒームトレーナーが遮った。興行の主催者や日本人ファンに感謝を述べた後、あらかじめ準備していたのかスマートホンを見ながら「この試合を開催するにあたって2人の選手がリングに上がるために最も重要なものは何か？　誰か答えを」と投げかけ。突然の逆質問に誰も手を挙げなかったが、同トレーナーはこう続けた。

「この試合をクリーンに行いたい。試合そのものが選手たちのレベル、質を下げることのないことを祈る。このような問題がおこるようなら選手がリングに上がる意味がなくなる。安全な方法でテープ（バンテージ）が巻かれることを願っている。イノウエのハンドラップ（バンテージ）の記事を見たんだ。そこについての話だ。

　私は『互いに安全なテーピングをしましょう』というのが言いたかった。イノウエの過去の試合を見て思ったことだ。英語の記事では、イノウエがバンテージを巻く映像がある。そこで巻き方に論争が起きている。この試合では問題が起こらないよう安全に。レフェリーにも求めたい」

　関係者によると、井上が2回TKO勝ちした昨年6月のノニト・ドネア（フィリピン）戦に関する海外メディアの記事のことだという。井上が試合前にバンテージを巻く動画付きで報じられ、拳に硬さを持たせるやり方ではないかと指摘されている。

　しかし、井上からすればルール上認められたものでやっているだけ。会見後に取材に応じた陣営の大橋秀行会長は「意味がわからない。みんなずっとこれでやっている」と主張。「井上は今までこれで世界戦を19回やってきました。言われたことは一度もないし、何を言っているのかわかりません」と繰り返した。

　陽動作戦の可能性については「いいんじゃないですか。ひと悶着ありますね。本番で勝てばいいでしょう」と一蹴。会場はピリピリした緊張感が走り「井上の試合では久々ですね」とし、「それほど警戒しているのでは。こちらは試合だけに集中します」と意に介さず。フルトンの印象については「思ったほど体格差がない。ダボっとした服を着ているけど、脱いだら細いのでは」と振り返った。

　一方、相手陣営の指摘について井上は会見で笑顔を浮かべ、「何か、凄いナイーブだなと思います。自分は（プロで）24戦やって、全試合で正々堂々と試合をしている。何の記事を見たのかわからないけど、少しナイーブになりすぎかなと。こちらも正々堂々と戦いたい」と言い切った。

　これにはラヒームトレーナーも「イノウエからナイーブになっているとあったが、私がフルトンと日本に来るのは問題なく試合ができるからだ。選手のどちらかが有利になってはいけない。先ほどの記事でテーピングの巻き方で論争になっている。パンパンのグラブで試合をするのは公平ではない」と応戦。フルトンは「自分は最高の気分でいられています。期待してください」と笑顔を浮かべたが、会場は騒然とした空気のまま終了した。