都内で引退会見

　車いすテニスの国枝慎吾さんが7日、都内にある所属先のユニクロ有明本部で現役引退会見を行った。4大大会では男子世界歴代最多50度の優勝を誇り、4大大会とパラリンピックで優勝する「生涯ゴールデンスラム」を達成した38歳。先月22日に世界ランク1位のままSNSで引退を報告した世界的レジェンドが、約27年の競技人生を振り返り、長年支えてくれた妻・愛さんに感謝を述べた。

　国枝さんは一番身近な存在に感謝した。会見には約200人の報道陣らが集結。20台以上のテレビカメラが主役を捉え、ネットなどでも生中継された。ユニクロの柳井正会長兼社長とスーツ姿で登壇した国枝さん。ファン、スポンサーらに感謝を述べ、妻への想いを口にした。

「一番はリオパラリンピックの2016年の時、僕自身も相当追い込まれていた。その時にやっぱり妻の存在は凄く大きかったです。メディアの前では強気な発言、『金メダルを獲ります』とか言わなきゃいけない感じがあるじゃないですか。どんなに傷を負っていても、そこで弱音を言ってしまうとプレーにも出てしまうと思って、なかなか弱音は言えませんでした」

　自身を奮い立たせるため、ラケットに「オレは最強だ！」とテープを貼るなど、強靭なメンタルを保つ一流プレーヤー。その裏で弱気の虫に悩むこともあったという。

「それを言えるのが妻。家に帰って『もう無理だな』『もう試合に間に合わない』『もう引退だな』とか、そういうのを吐き出せる場所があったのは競技の助けになったと思う。それからツアーのに帯同してくれた。テニス選手は世界中を周っていて割と孤独なんですけど、妻がいてくれるだけで、ホテルに帰れば家のようなアットホームな空気が流れる。それだけでもオンとオフをはっきり切り替えられるのは凄く助けになりました」

　4大大会は男子シングルス通算28度、ダブルスは22度優勝。シングルスでは全豪11回、全仏6回、ウィンブルドン1回、全米7回の優勝を誇る。パラリンピックは2004年アテネから、日本選手団の主将を務めた21年東京まで5大会連続出場。シングルスでは08年北京、12年ロンドン、東京で金メダルを獲得した。アテネではダブルスでも優勝。昨年7月のウィンブルドンを初めて制し、パラリンピックの金メダルと合わせた「生涯ゴールデンスラム」を男子で初めて達成した。

　数々の栄光には、最愛の妻の存在は欠かせなかった。