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「摂食障害を使った売名」と中傷されても… 鈴木明子が女子選手の健康問題を伝える理由【THE ANSWER Best of 2021】

伊藤華英さん(左上)、須永美歌子教授(右上)とともにオンラインイベントに参加した鈴木さん【写真:編集部】
伊藤華英さん(左上)、須永美歌子教授(右上)とともにオンラインイベントに参加した鈴木さん【写真:編集部】

「病気を使った売名」と中傷された過去「誰か一人でも救えるなら、それでいい」

 しかし、女子選手の健康はフィギュアスケート界で現在進行形の課題である。

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「特に体重は切っても切り離せない競技。今は子供たちが4回転ジャンプやトリプルアクセルに当たり前に憧れる時代ですが、健康な体があってこそスポーツができる根本を忘れないでほしい。必要になるのは選手、指導者、保護者という3者の連携。特に、大人が気づいてあげてほしいです」

 その言葉にはっとさせられた。例えば、高校野球では球児が肩や肘の怪我を押して投げることを「熱投」など、美談として取り上げることを抑制し、中高生の健康を守る機運が高まっている。選手を守る「大人」は私たちのようなメディアも含まれる。

 そんな話をすると、鈴木さんも頷きながら「私が一つ気になるのは……」と選手を取り巻く環境について口を開いた。

「フィギュアスケートも人気が出て、YouTubeで当たり前に演技が見られ、メディアに取り上げていただき、それはありがたいこと。一方で、SNSで顔も名前も分からない方から、いろんな声が届く時代。例えば、『あの子、太ったね』というほんの一言。それを選手も見る可能性もあります。

 10代の選手もエゴサーチしたら目にすることもある。良い言葉も悪い言葉も届いてしまうかもしれない。だから、もしフィギュアスケートを応援する思いを持っていただけるなら、第三者の何気ないひと言も選手の一生を左右するかもしれないことを想像してもらえたらと思うんです」

 フィギュアスケートの特に女子は選手としてのピークが10代中盤から20歳前後といわれ、他の競技と比べても低い。その分、トップ選手であっても人格的に未熟なうちに様々な声に触れ、影響されるリスクは大きい。だから、大人が守ってほしいというのが彼女の願いだ。

 鈴木さんはある経験を打ち明けた。「私、摂食障害のことを売名だと言われたことがあるんです」と。

「現役時代、五輪を目指す立場になり『摂食障害からの復帰』という経験にメディアに興味を持たれました。それを良く思わない方もいて『病気を使った売名行為だ』と言われたことがあります。それは、すごく衝撃でした。私は病気のことを言ってはいけなかったのかと感じました」

 心ない中傷を受けた過去。しかし、今は「いろんなことを発信する立場になり、売名と言われようがなんだろうが、誰か一人でも救えるなら、それでいいと思っています」と言う。どんな過去も明るく前向き話す裏側にあった想いに、胸を打たれた。

「選手の時はそういうひと言にすごく傷つき、私も『なんで、頑張っているのに否定されるんだろう』と思ったことはたくさんありました。そういうSNSの使い方についてはもちろん、選手は使い方に気を付けるべきですが、応援する皆さんもその優しさを持ってくれたらと思います」

 救えるなら、誰か一人でもいい。鈴木さんはスポーツ界に生きる「大人」の一人として、これからも女性アスリートの健康問題を伝え続ける。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)


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鈴木 明子

THE ANSWERスペシャリスト プロフィギュアスケーター

1985年3月28日生まれ。愛知県出身。6歳からスケートを始め、00年に15歳で初出場した全日本選手権で4位に入り、脚光を浴びる。東北福祉大入学後に摂食障害を患い、03-04年シーズンは休養。翌シーズンに復帰後は09年全日本選手権2位となり、24歳で初の表彰台。10年バンクーバー五輪8位入賞。以降、12年世界選手権3位、13年全日本選手権優勝などの実績を残し、14年ソチ五輪で2大会連続8位入賞。同年の世界選手権を最後に29歳で現役引退した。現在はプロフィギュアスケーターとして活躍する傍ら、全国で講演活動も行う。

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