元甲子園球児の経営者が野球部を贔屓するマジメな理由「活躍する人に『補欠』の共通点」【THE ANSWER Best of 2021】
イチロー氏に見る野球と営業の共通点とは
――野球部のどういう環境が、社会で活躍できる要素を作り上げていると思いますか。
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「控えやベンチ外の選手も周りを支えることが仕事とはいえ、個人練習は欠かせない。チーム成果を最大化するために貢献しながら、裏で『レギュラーのあいつに勝ちたい』と個人を高め、表に立つ時は自分の技能が問われる。これがビジネスとも共通しているし、個人競技では成し得ない野球の良さ。他競技でも全般に言えるでしょうが、特に野球の場合はよりその色が強いと感じます。
例えば、サッカーは流れの中でフォワードの選手がディフェンスをやることもあるし、その逆もある。でも、野球はワンプレーの流れでキャッチャーが他のポジションをやることは、ほぼ起こりえない。職人芸というか、団体競技でありながら個人技能が求められることが競技の特性と言えると思います。これが凄くビジネスに近い。もっと言うと、ベンチャービジネスに近いですね」
――何かしら専門領域で、強い分野があった方が良いということでしょうか。
「そのための努力を怠らないことが重要だと思います。ビジネスでもコンバートはあります。明日から営業やってくれ、バックオフィスに行ってくれ、マネージャーをやって……そんな風にコンバートごとに仕事内容が変わってくる。ピッチャーからキャッチャー、急に代打の切り札になるなど、ポジションが変わることはビジネスで見ると結構あること。その都度、個人技能を高めていくということも野球に近いと思います」
――ギグセールスでは、ドラフト候補だった選手も引退後に営業として活躍されていると聞いています。ずばり、野球と営業の共通点にはどんな所があるでしょうか。
「追究できる力です。NPBに行けなくとも、より高いレベルで何かを10年以上続けてきた人は追究・研究する持久力を持っています。PDCAなんて言葉を知らなくとも、できるまでやる。できるようになったら更に上を目指す。これは一朝一夕には身につきません。例えば、イチロー選手の言葉が全ビジネスパーソンに刺さるのは、世界一まで突き詰めた人だから。
野球以外の分野であっても、追究する姿勢を持っていると、自分の得意分野と営業とのアナロジー(類似性)を見出せる。うちの会社だと太鼓の達人や声優業を突き詰めた後にプロ営業となって活躍されている方もいます。
その他で野球との繋がりで言えば『確率論的な考え方』はリンクすると思います。10分のいくつ、100分のいくつというのが、営業と数字の感覚が似ていますね。成功率をどれだけ上げていくか、失注率をいかに下げるか。分母を増やす努力などもそうですね」
――先に打席に立った選手が、他の選手に相手投手の情報を与える部分などは、営業にも同じようなシチュエーションがあったりするのでしょうか?
「情報を共有することで、初対面の相手を攻略しようとする動きはあります。ただ、打席で事前情報ばかりを考えても絶対に打てません。これも、野球と営業で凄く近いと思います。現場に行ったら一度、事前情報を忘れないといけない。打席同様、その場の対応が一番大切だからです。『フォークが決め球』『初球はストレートが多い』などと一度インプットした後、頭をクリアにして打席に立つことは凄く大事。ずっとデータを頼りにして、タブレットだけ見て『え~っとですね……』なんてやっていると、成果は出ない。インプットは大事だけど、現場ではオープンスキル、その場の対応が求められます」
(明日26日掲載の後編へ続く)
■福山敦士(ふくやま・あつし)/ギグセールス株式会社取締役
1989年生まれ、神奈川県出身。慶応高では投手として2年春の甲子園8強入りに貢献。慶大準硬式野球部では学生コーチとして、同校を57年ぶりの全日本大会出場に導いた。卒業後の11年に新卒でサイバーエージェントに入社。25歳でグループ会社の取締役に就任。16年に独立し、株式会社レーザービームを創業。同社を含め4度のM&A(売却)を行い、20年にギグセールス株式会社の取締役に就任。21年から慶応高にてビジネス実践講座を担当。ビジネス書の作家としてもこれまでに14冊を手掛けており、著書に『仕事の鬼100則(明日香出版)』『紹介営業の教科書(同文館出版)』『新しい転職面接の教科書(大和書房)』など。
(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)