【名珍場面2017】イチロー、米国が言葉を失った日 感動の“本拠地凱旋弾”「これ以上の脚本書けるか」
実況&解説は“43秒の沈黙”、記念球キャッチのファン、同僚たちも敬意
熱狂と化したスタジアムの光景が次々と映し出される中、ひたすら無言を貫いた。イチローはそんな中、クールにダイヤモンドを一周し、総立ちとなっていたベンチの監督、チームメートと次々とハイタッチを交わした。そして、次打者のゴードンが打席に立つと、ようやく実況は「何てドラマチックなんだ。ワオ」と沈黙を破った。その間、43秒だった。
解説のホランズワース氏も「(イチローは)驚いているんでしょうか? 私はそうは思いませんが。これ以上の脚本を書けますか?」と感嘆。誰も想像しえなかったドラマの感動を伝えるため、示し合わせたわけでもなく、2人は一切の言葉を挟まず、“43秒の沈黙”で粋な演出を施したのだった。
このホームランに立ち会った人々も格別だった。試合後、右翼席でボールを掴んだシアトル在住のケヴィン・シャノンさんは関係者からの依頼を受け、歴史的なボールとイチローのサイン入りボールの交換に応じ、「イチローが大好きなんだ。自分が見てきた中で最も素晴らしい選手の一人だね。僕の野球好きとしての魂はイチローによるところが大きいよ」と話したという。
ベンチから見守っていたマーリンズのイエリッチは「彼が打った時はベンチに座っていたんだけど、『彼なら当然』という感じだったね。他に何を期待すればいいんだ?」、先発したボルケスは「彼はキングだ。彼はこの球場でとても愛されている。今日、彼が本塁打を放ったのは、彼の友達、チーム、そして彼自身にとっても素晴らしかったね」と敬意を払い、称賛したという。
当然、米メディアも絶賛の嵐に。「果たして、これがイチローのセーフコ・フィールドでの最後の試合になるのだろうか。しかし、彼にはまた違う考えがあるようだ」と記したMLB公式サイトでは、イチローの“再凱旋”を希望するコメントを紹介していた。
「そうは思っていないです。戻ってくると思います。そう願っています」
今季限りでマーリンズからFAとなり、所属先が決まっていないイチロー。しかし、背番号51は来季もメジャーのグラウンドに立ち、セーフコ・フィールドにも帰ってくるだろう。年齢は44歳。ただ、そんなことは関係ない。イチローはイチローなのだから。
【了】
ジ・アンサー編集部●文 text by The Answer