【NBAバズ動画解剖】レナードが“中指一本ブロック” 終盤に見せた超一流のワザを解剖「これは凄い世界」
米プロバスケットボール(NBA)のプレーオフでは、トップ選手たちが世界最高峰のワザで競演している。「THE ANSWER」はプレーオフ期間に特別企画「NBAバズ動画解剖」を実施中。期間中にSNS上で“バズったプレー”を元日本代表・渡邉拓馬氏が独自の視点で解説する。第9回はNBA公式インスタグラムが9月8日に投稿し、28万件を超える「いいね!」が集まった「レナードの中指一本ブロック」だ。
「NBAバズ動画解剖」―プレーオフにSNS上で話題を呼んだ動画を渡邉拓馬が分析
米プロバスケットボール(NBA)のプレーオフでは、トップ選手たちが世界最高峰のワザで競演している。「THE ANSWER」はプレーオフ期間に特別企画「NBAバズ動画解剖」を実施中。期間中にSNS上で“バズったプレー”を元日本代表・渡邉拓馬氏が独自の視点で解説する。第9回はNBA公式インスタグラムが9月8日に投稿し、28万件を超える「いいね!」が集まった「レナードの中指一本ブロック」だ。
【バズ動画はこんなプレー】西地区準決勝のナゲッツ―クリッパーズ第3戦、最終クォーター(Q)残り1分50秒。109-103とリードしたクリッパーズは、相手エースのジャマール・マレーがドライブからダンクに来たところ、ゴール下のカワイ・レナードがブロックに跳んだ。マレーの高いダンクに押し負けそうになったが、最後は中指の先だけがボールに触れる状態でブロック。なんとか守り切った。
終盤の僅差の場面でスーパースターが見せた奮闘だが、知ればバスケが面白くなる渡邉氏が見たポイントとは――。
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これはレナードの持って生まれたものが大きいと思います。レナードはボールをわしづかみできるくらい手が大きいです。NBAでも異常なくらいの大きさ。頭の位置はマレーの方が上にありますが、リーチは一緒。腕の長さと手の大きさがわかります。逆にマレーの手が短いのかなと感じるくらいですが、やはりこれを見ると凄い世界だなと思いますね。
また、レナードはタイミングを合わせてブロックに跳んでいます。マレーがトップに行った時点で寄ろうと思えば寄れるのですが、あまり早くヘルプに行ってしまうと、ゴール下とコーナーで相手のアウトナンバー(数的優位)になってしまう。そこを恐れて絶妙なタイミングで寄っていきました。マレーにシュートしか選択肢を与えないようなタイミングです。
あとは最後まで諦めない気持ちも伝わってきました。終盤でシュートを与えたくない時間帯。ブロックできる自信があったと思いますが、マレーのジャンプ力もあって意外と高さが足りなかった。それでも最後まで諦めませんでした。どう考えてもオフェンスの方が進行方向なので力を伝えやすい。これに耐えきれるのは、レナードの体の強さもあると思います。
下手をすれば突き指や脱臼をするので、やはり凄いの一言ですね。レナードだからできたと思います。互いに疲労もあり、力を振り絞っている感じがしますよね。この試合の激しさを物語っています。
ナゲッツはシュートクロックが残り11秒でヨキッチがポストにいました。マレーはパスをして、ハンドオフに入っていってもよかったですが、時間もない。マレーはエースとして『ここは自分でいかないといけない』という責任もあったと思います。
マレーへのディフェンスはモントレズ・ハレル(5番)というインサイドの選手がついていました。マレーはクイックネスのアドバンテージがあるので、ドライブしたのだと思います。画面下のシューターについているパトリック・ベバリー(21番)が、マレーにあまり寄っていません。アウトサイドにパスを出されるのが怖い。だから、ナゲッツのオフェンスの配置はよかったと思います。
残り10秒でエースにボールを渡して、なんとかシュートで終わろうというシーンだったのでナゲッツとしては悪くないです。シュートを落としてもヨキッチがリバウンドで取れる。どちらかというと、クリッパーズにディフェンスのズレがありました。この乱れに対し、マレーがクイックネスでドライブをして、ゴール下のレナードは自分と一緒くらいだからフィニッシュまで行けるという判断をしたのだと思います。
ここだけを切り取ってみれば、レナードのディフェンスとしてのビッグプレーです。ここでダンクをぶちかまされたら一気に流れが変わったと思います。この時間帯にこのプレーができるのがレナードの凄さ。オフェンスの調子が悪かったとしても、チームに貢献するという気持ちがある素晴らしい選手だと思います。
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恵まれた身体能力に加え、終盤で気持ちも奮い立たせて絶妙なタイミングで跳んだレナードのビッグプレー。レナードはこの試合で23得点、14リバウンド、6アシストをマークし、113-107で勝利に導いた。
(THE ANSWER編集部)