【NBAバズ動画解剖】エースの個人技の裏に…“気合のディフェンス”が招いた落とし穴「完璧に行き過ぎた」
米プロバスケットボール(NBA)のプレーオフでは、トップ選手たちが世界最高峰のワザで競演している。「THE ANSWER」はプレーオフ期間に特別企画「NBAバズ動画解剖」を実施中。期間中にSNS上で“バズったプレー”を元日本代表・渡邉拓馬氏が独自の視点で解説する。第7回はNBA公式インスタグラムが9月13日に投稿し、33万件を超える「いいね!」が集まった「エースのリバースターン」だ。
「NBAバズ動画解剖」―プレーオフにSNS上で話題を呼んだ動画を渡邉拓馬が分析
米プロバスケットボール(NBA)のプレーオフでは、トップ選手たちが世界最高峰のワザで競演している。「THE ANSWER」はプレーオフ期間に特別企画「NBAバズ動画解剖」を実施中。期間中にSNS上で“バズったプレー”を元日本代表・渡邉拓馬氏が独自の視点で解説する。第7回はNBA公式インスタグラムが9月13日に投稿し、33万件を超える「いいね!」が集まった「エースのリバースターン」だ。
【バズ動画はこんなプレー】西地区準決勝のクリッパーズ―ナゲッツ第6戦、第3クォーター(Q)残り1分。74-79で追うナゲッツは、3ポイントライン外でボールを受けたジャマール・マレーが中央から仕掛けた。相手ディフェンスに体をぶつけてターン。リング下のスペースまで切り込むと、そのままダンクを叩き込んだ。
エースのマレーが個人技で突破したように見えるシーンだが、知ればバスケが面白くなる渡邉氏が見たポイントとは――。
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ナゲッツは、ヨキッチ(15番)からダウンスクリーンをして、マレーにハンドオフをする場面。ハンドオフ後もクリッパーズのジョージ(13番)がしっかりマレーについてきています。ジョージがマレーの進行方向を抑えたので、クリッパーズの選手たちも一瞬、中には来ないなと油断してしまいました。ヨキッチにパスがいくのではないかと思ったように映ります。
しかし、マレーの個人技でぐるっとリバースターンをしてジョージを抜き去った後、ゴール下のスペースがガラ空きでした。さらに、ボール持っているマレー以外全員が3ポイントを打てる選手です。通常、ビッグマン(ナゲッツならヨキッチ)に3ポイントがない場合、この後にインサイドに入ってくるのでこういうスペースは生まれないのですが、全員が3ポイントを打てる。だから、3ポイントラインより外に広がって中を空けています。
ここでクリッパーズのウィリアムズ(23番)や奥のグリーン(4番)がヘルプに来れば、ナゲッツのコーナー2人がノーマークになる。マレーの状況判断も必要ですが、今回の場合はクリッパーズのディフェンスが甘かったです。単純に遅れてスペースを作ってしまったので、マレーが何でもできる。どんなスキルでもフィニッシュできる状態になってしまいました。
マレーとのマンツーマンのディフェンスも甘くなってしまいました。マレーはジョージの後ろにいるズバッツ(40番)の方向にドリブルしているので、ジョージは完璧にコースに入らなくてもよかったんです。ズバッツのディフェンスがあるので、抜かれてもスイッチしてどうにかできたと思いますが、ジョージはプレーオフということもあり、ディフェンスでやられてたまるかということで完璧に抑えに行ってしまったのかもしれません。
行き過ぎたことでマレーの左側にコースを空けてしまった。ヨキッチのマークマンにズバッツがいてスペースが凄く狭いので、マレーが右側から抜いていくことはあまりない。このあたりがいつものクリッパーズと違ったのかなと思います。さらに押し合いになり、ジョージの重心が浮いてしまったので横には動けないバランスになってしまいました。
でも、マレーもうまかったですね。右側にフェイクしてみて左側にスペースを作っておいた。本当は左に行きたかったのを、右にフェイクをして自分でクリエイトしました。ディフェンスがヘルプに来ても、コーナーにノーマークができるので、マレーのスキルからすればパスをさばけていた。トップのやり取りでもう勝負あったと思います。
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ジョージの気合を入れたディフェンスがミスに繋がり、それを逃さなかったマレー。ナゲッツは全員が3ポイントシュートを打つことができ、配置によってマレーの選択肢も増えた。エースの個人技の裏には多くの要素があり、結局、ナゲッツが111-98で逆転勝利を収めた。
(THE ANSWER編集部)