運動技能も睡眠により向上 ジュニア世代の成長・発達に重要な「眠活」前編
子どもたちの育ちのために押さえておきたい睡眠のポイントを紹介します。今回は睡眠の役割についてです。
睡眠の役割とは
子どもたちが最も増やしたい時間を調べたところ(博報堂、2007)、10年前は「友達とすごすこと」が第1位でしたが、調査をした時点では「睡眠時間」がトップになりました。
睡眠に問題がある子どもには、昼間に眠い、横になりたい、肩こりといった身体症状とともに、イライラする、物事に熱心になれないなど、集中力・記憶力の低下、感情抑制の困難等の症状がよくみられます。子どもたちの育ちのために押さえておきたい睡眠のポイントを紹介します。今回は睡眠の役割についてです。【解説・宮崎総一郎、中部大学生命健康科学研究所教授】
(1)大脳の大きな人間には、ほかの動物より長い眠りが必要
そもそも睡眠とは何のためにあるのでしょうか。眠りは、ただ休んでいるだけの無為・無駄な時間のように考えられがちですが、そうではありません。眠りは、脳をよりよく活動させるために必要不可欠な「生理機能」なのです。脳には神経細胞が集まっていて、身体各所からの情報を集中的に処理し、信号を出して全身を制御しています。それと同時に、脳はとても繊細な臓器で、疲れやすく連続運転に弱いという面も持っています。コンピュータ-と同じで、ずっと使い続けると、温度が上がりすぎて働きが鈍ったり故障したりしてしまうのです。
全身の司令塔である脳が故障すると、正常な精神活動はもちろん、身体動作や生命維持活動も危うくなります。そこで、脳、とりわけ大脳を休息させてクールダウンし、機能を修復・回復させなければなりません。その役割を担うのが睡眠なのです。忙しい生活を送っていると、「8時間も眠るのはもったいない」とつい考えてしまいがちです。しかし、ヒトは大脳で高度に知的な活動を展開しています。だからこそ、長時間の眠りが必要なのです。