身長164cm、一番小さなプロ野球選手からの贈り物 滝澤夏央が少年少女へ伝える「この体だからできること」
滝澤にしかできないこと「背の低い子に憧れてもらいたい」
ただ、新潟・関根学園高に進むと、中学校までとは世界が違った。「頑張っても大きい選手には、遠くに飛ばす力でかなわないのかなと思ったり、実際にパワーで負けてしまったり……。そこだけ見れば、自分には魅力がないのかなと思ってしまったんです」。プロ野球選手という夢を「口に出してもいいのかな……」というところまで追い込まれた。
その中で突き詰めたのは、体のサイズに関係ないプレーだ。小学校からショート一筋。「小さい頃からバッティングをしていたイメージがなくて……」と、父・孝弘さんとの練習も、いつもノックだった。小学校のグラウンドで、怒られながらも納得するまで食らいついていた。ボールを捕り、投げるまでに体の大きさは関係ない。守備が楽しくて仕方なかった。
長所をプロ野球のスカウトに見てもらうには、甲子園に行くしかないと思っていた。しかし2年秋の北信越大会、勝てば選抜出場が見えるという敦賀気比との準決勝で、9回に追いつかれ延長で敗戦。最後の夏も、県大会の準々決勝で延長の末に敗れた。
プロ入りへのステップのはずだった甲子園には行けなかった。ただ高校野球が終わると、初めてスカウトから「守備を評価している。野生感のあるスタイルが魅力」と言葉をかけられた。小さいことを長所ととらえて、やってきたことは間違っていなかった。そんな滝澤にしかできないことがある。
「背の低い子に、憧れてもらいたいんです。この身長だからできることがあると思ってもらいたい。1番小さな選手にしかできない魅力があると思っていますし、思ってもらいたいんです」
迷うことこそあったが「夢はプロ野球選手です」という言葉を「考えてみれば、ずっと言い続けていましたね」と笑う。どんどんパワー重視の傾向が強まっているプロ野球の世界でも、体の小ささを生かすことはできる。滝澤のプレーには、小柄な少年少女へのヒントとメッセージが詰まっている。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)