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「スタンフォード式 最高の睡眠」著者が語る スポーツ選手に必要な「良質な睡眠」

アスリートが睡眠の質を高めるためのポイントは「ポジティブルーティン」

――何名かのサッカー選手に、睡眠に対する疑問や悩みを聞いたところ、一番多かった悩みが「試合後に眠れない」というものでした。

「アスリートは入眠までに時間がかかり、睡眠の質が良くないことが多いようですね。その理由としては、『ストレス』や『緊張』が挙げられます。試合前の緊張や興奮、不安などのセルフマネジメントがうまくできれば、試合前の睡眠の質を高めることができ、さらに良い結果も出せる可能性は高いのですが、試合後の睡眠は非常にコントロールが難しいのです。鍵となるのは生活習慣。睡眠と覚醒は表裏一体のものなので、朝起きたときから気を遣う必要があります。

 質の高い睡眠をとるためには、夕方頃に身体や頭のスイッチをオフにして、リラックスして寝る準備に入っていくのが重要です。スポーツ選手や指導される方にとっても、体温変化と睡眠の関係性といった基礎的な睡眠に関する仕組み、知識を得ることも必要でしょう。間違った情報も溢れていますので、正しい知識を身に付けなくてはなりません。

 基礎的な睡眠の仕組みとして代表的なのが、レム睡眠とノンレム睡眠のサイクルでしょう。まず、入眠時はノンレム睡眠に入ります。ノンレム睡眠が90分続いて、その後に短いレム睡眠が来る。翌朝までにそのサイクルを4~5回繰り返しています。

 そのサイクルを意識することも大切ですし、睡眠が持つ役割というのも同様に大切です。以前、睡眠は疲れと眠気を取るだけだから眠れなくても横になっていればいい、と言われることがありました。でもそれでは不十分で、眠ることによって起こる自律神経やホルモンの変化を介した身体の新陳代謝や修復が十分でないなどの悪影響が出てくる可能性があります。

 アスリートの睡眠負債は、技術の習得プロセスに関わってきます。普通は入眠時に体温が下がり血圧も下がるのですが、慢性的な睡眠負債があると就寝中も交感神経活動が高く、血圧が高いまま眠りに入ってしまう。そうなると休息が十分に取れず、翌日のパフォーマンスに影響を及ぼします。新しい技術の習得においてもマイナスに働きかねません。さらには、自律神経、免疫にも関与してくるので、感染症やがんなど疾病リスクが上がることも分かっています。

 また、脳というのは使えば使うだけ老廃物を出すのですが、その効率にも睡眠が重要な関わりがあることが判明しています。このように、睡眠には起きているときにはできない、さまざまな役割があるので、妨げられるとやはり支障が出てしまうのです。しっかりと睡眠が取れていれば自然に起きられるし目覚めもいい。身体のメンテナンスにもなります。

 生活習慣が鍵となると言いましたが、個々人で身体の調子がいい習慣を覚えて、それを続けていくのがいいですね。『ポジティブルーティン』と呼んでいるのですが、『何をしたときに良い睡眠が取れたか』ということを、睡眠の仕組みや役割といった知識を踏まえて考え、記録を取り続けていくことで、良いパフォーマンスにつながると思います。トップレベルではわずかな差が結果に大きく影響し、その後の人生までもが変えてしまいますから、そのような取り組み方をおすすめします」

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