国際大会に必要な食事環境とは? 世界陸上で来日したスポーツ栄養先進国・アメリカの視点
Jリーグやジャパンラグビー リーグワンをみてきた公認スポーツ栄養士・橋本玲子氏が「THE ANSWER」でお届けする連載。食や栄養に対して敏感な読者向けに、世界のスポーツ界の食や栄養のトレンドなど、第一線で活躍する橋本氏ならではの情報を発信する。今回は「国際大会での食事と栄養サポート」について。

公認スポーツ栄養士・橋本玲子氏の連載 今回は「国際大会での食事と栄養サポート」
Jリーグやジャパンラグビー リーグワンをみてきた公認スポーツ栄養士・橋本玲子氏が「THE ANSWER」でお届けする連載。食や栄養に対して敏感な読者向けに、世界のスポーツ界の食や栄養のトレンドなど、第一線で活躍する橋本氏ならではの情報を発信する。今回は「国際大会での食事と栄養サポート」について。
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今年、日本で開催された国際大会の一つ、世界陸上。その大会で最も多くのメダルを獲得したのが米国でした。スポーツ大国の米国は、スポーツ栄養の分野でも先進国。そこで、アメリカ選手団のスポーツ栄養士の方に、選手団の食事や栄養サポートについて今大会を振り返って頂きました。
取材に応じてくれたのは、米国五輪・パラリンピック委員会シニアスポーツ栄養士の、リッキー・キーン(Rikki Keen)氏。彼女はもう一人の栄養士とともに来日。計141名の選手の食事サポートを担当しました。
キーン氏はまず、「メディカルスタッフと栄養士のチームがしっかりした協力体制で動けたこと。そして、非常に協力的だった日本のボランティアスタッフによって助けられた大会だった」と言います。
今大会、栄養士チームがもっとも頭を悩ませたのは、レース当日の移動時間でした。なぜなら、最終調整を行うサブトラックとメイン会場が離れているため、選手の移動時間や補食を提供する場所を踏まえた栄養補給計画を立てる必要があったからです。そのため、レース・試技のスタート時刻や消化にかかる時間を計算し、移動時間とそれぞれの場所に持参する補食の準備も含めて検討。選手が必要なタイミングで無理なくエネルギー補給をできるよう、細心の注意を払ったと言います。
2名しかいない栄養士は個々の選手に同行することはできません。そのため、現場ではメディカルスタッフが栄養士のプランに基づき、試合前後や試合間の補食のセッティング、栄養補給のサポートを臨機応変に対応。選手を支えました。
毎日の食事については、宿泊先のホテルが提供するブッフェスタイルの食事が基本でした。来日の約1か月前にメニューの詳細が通達されたため、「追加のリクエストができなかった」とは指摘するものの、「それほど困らなかった」とコメント。ホテルの料理はそれぞれ栄養価やアレルギー表示もしっかりされていたため、選手個々が、コンディションに合わせたメニュー選びを容易にできた、とのことです。
しかし、「ブッフェのメニューが毎日同じだった」という点については繰り返し言及。恐らく「困ったことの一つ」だったのでは? と感じます。
選手にとって、食欲はコンディションを支える重要な要素です。毎日同じメニューが続くとどうしても飽きが生じ、食欲が低下します。その結果、体重やコンディションの維持が難しくなり、パフォーマンスへも影響が及びます。そのため、アスリートが環境に左右されず、十分に食事が摂れる状況を整えることが非常に重要なのです。
一方、宿泊していたホテルの近くに多くの飲食店があったため、選手もスタッフも時々、外食を楽しんでいたとのこと。大会中、慣れない土地で外食するのはリスクもありますが、「日本の食べ物は非常にライト(脂質が少なく、体に負担が少ない)だし、衛生面でも安心。むしろ、よい気分転換になった」そうです。
そして、意外にも喜んでいたのはコンビニエンスストアの存在。「日本はどこにいってもコンビニがあり、選手たちに必要な補食が簡単に手に入った」とのこと。また、輸入食品の充実した大型スーパーでの買い物にはほぼ1日おきに足を運び、選手が食べ慣れているアメリカの食品も買い込んだようです。
ちなみに、アメリカの選手の代表的なコンフォートフード(補食の定番)といえば、『ピーナッツバターアンドジェリーサンド』。ピーナッツバターとフルーツジャムをたっぷりはさんだパンで、日本人でいえばおにぎりのような存在。今大会中も「山のように大量に手作りした」とキーン氏。「最悪、これさえあれば何とかなります!」と笑っていました。
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