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米国のアスリートもコメ料理は「勝負飯」 スポーツ大国でも好まれる栄養学的な理由

スポーツ先進国アメリカのトップアスリートの間でも、ご飯は人気の「勝負飯」。アメリカのアスリートは何故、お米料理を好むのか。アメリカオリンピック・パラリンピック委員会のシニアスポーツ栄養士、ヌワニー・ジャヤラットさんのインタビューを前後編にわたりお届けする。

アメリカオリンピック・パラリンピック委員会シニアスポーツ栄養士、ヌワニー・ジャヤラットさんインタビュー 前編

 スポーツ先進国アメリカのトップアスリートの間でも、ご飯は人気の「勝負飯」。アメリカのアスリートは何故、お米料理を好むのか。アメリカオリンピック・パラリンピック委員会のシニアスポーツ栄養士、ヌワニー・ジャヤラットさんのインタビューを前後編にわたりお届けする。

 前編はアスリートの食事に米が適している理由について。

【こちらもオススメ】米国でも米を食べるアスリートたち カルフォルニア米「カルローズ」を使った簡単レシピを紹介 「カルローズ米×スポーツ」特設ページをチェック

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 アメリカ人の主食と聞くと、パンやパスタ、じゃがいものイメージが強いかもしれません。確かに、日本のように茶椀でご飯を食べる習慣はありませんが、元々、アメリカ各地では色々なお米料理が食べられています。例えば、魚介、オクラと米のシチュー『ガンボ』や、米と豆を組み合わせた『ライスアンドビーンズ』、米とチーズ、牛乳を使ったグラタンのような『キャセロール』などは、とてもポピュラーなお米料理です。

 特にトップアスリートは、エネルギー源としてご飯を好んで選びます。米に含まれる糖質(炭水化物)はアスリートにとって、必須栄養素。筋グリコーゲンの素となり、運動に必要なエネルギーを体に蓄えてくれます。

 トップアスリートは自分のポテンシャルを最大限、試合で発揮するのが仕事です。そのため、日々、コンディションを整えながら、厳しい練習やトレーニングを積み重ねています。高強度、かつ長時間の運動を毎日行うため、バテないためには相当量のエネルギー源が必要なので、合宿や遠征時に、選手からお米を使った料理をリクエストされることはとても多いです。

 アメリカのトップアスリートは、パンやパスタと比べ、米はヘルシーなエネルギー源であると考えています。その理由は二つ。第一に日本でよく食べられている炭水化物であること。こちらの選手たちは皆、日本の食文化は非常にヘルシーだというイメージを持っています。

 二つ目は素材そのものを食べる「クリーンフード」であること。最近、アメリカのアスリートたちは、できるだけ加工されていない食材を好みます。そのため、小麦を加工したパンやパスタよりもお米が好まれる傾向にあります。

 このほか、ローファットで消化も良い点、グルテンフリーの食材の一つでセリアック病やグルテン過敏症の選手も安心して食べられるという理由も大きいと思います。

 栄養士としては、米は小麦と比べ、アレルギー反応を起こす確率が低いため、チーム全体の献立を考えるときに便利であること、また、炊いたり炒めたりと調理のバラエティに富んでいることも、米の良さだと感じています。

 アスリートたちもいくら栄養価が高く、パフォーマンスの向上によい食事でも、献立がマンネリ化すると飽きてしまい、食欲が落ちます。その点、お米料理は、炒飯、リゾット、スープ、サラダなどバラエティに富み、飽きられず食べてもらえます。

 そして、炭水化物を、いつ、どのぐらい食べるのかも重要です。

 例えばレスリングの大会は通常、一人の選手が2日間続けて試合を行います。1日目は 1回戦から3回戦、4回戦と勝ち上がる日。2日目はメダルがかかった試合も多く、2日間、力を発揮し続けるために、こまめなエネルギー補給がカギとなります。

 脂質の少ない米は、消化・吸収のスピードが速く、素早くエネルギー源に変わります。そのため、練習の合間、試合の合間のリカバリー食にも適しています。人間の体も車と同様、燃料が入っていないと、パフォーマンスが落ちたり、トレーニングの強度が下がったりします。特に運動強度が高い、練習時間が長い場合、炭水化物をしっかり摂ることが重要です。

 レスリングアメリカ代表のメダリストも東京五輪の試合前に山盛りの米と肉を食べて「これで大丈夫!」と試合に臨んでいましたし、インスタントの味噌汁にご飯を入れた「補食」を試合の合間に食べていたスピードスケートの選手もいました。

 栄養学に興味を持ち、自ら食材を積極的にリサーチする傾向にあるアメリカのトップアスリートたち。このように米はエネルギー源として質が良いこと。そして、栄養学的視点から優れた食材であることを、トップアスリートたちはよく知っているのです。

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 ヌワニー・ジャヤラットさんがレスリングアメリカ代表の合宿で提供した、アスリート食のレシピを公開。エネルギー源となる米は、アメリカ・カリフォルニア州生まれの『カルローズ』を使用しました。

★『カルローズ』米レシピ 【牛肉のファヒータとスパニッシュライス】

「アメリカで大人気のメキシコ風炒め物『ファヒータ』のワンプレート料理。 
鉄分が豊富に含まれる牛肉と、鉄の吸収を助けるビタミンCたっぷりのパプリカが摂れる貧血予防メニュー。鉄が体内に不足すると持久力の低下や疲労につながり、競技力に影響を及ぼします。日頃から意識して摂りましょう。 

 トルティーヤが無ければスパニッシュライスを2倍量で作り、ファヒータとアボカドサルサを乗せて、ファヒータ丼に。また、減量時はトルティーヤ無し、アボカド抜きのトマトサルサにアレンジするのがおすすめです。

 アメリカでは、この料理のようにハーブやスパイスでご飯に味付けるレシピが豊富。ふわっと炊き上がる『カルローズ』は、調味料を加え混ぜてもご飯が団子にならず、おいしく仕上がります」(ヌワニー・ジャヤラットさん)

⇒「牛肉のファヒータとスパニッシュライス」の詳しいレシピを見る(PDF)

 炊いても茹でても炒めてもおいしい、注目のアメリカ米『カルローズ』は軽い食感とアルデンテとも言える歯ごたえが特長。調味料やドレッシング、オイルとの相性がよく、アジア料理から地中海料理、西欧料理まで、幅広い料理にぴったり。

(後編はこちら)アメリカ米「カルローズ」はアスリート食に相性抜群 多忙な選手に嬉しいレシピを公開

■ヌワニー・ジャヤラット
大阪府出身。高校卒業後、渡米。カリフォルニア大学バークレー校を卒業後、米国登録栄養士(RD)となる。コロラド州立大学コロラドスプリングス校で修士号修得後、アメリカオリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)で勤務。2018年にネブラスカ州立大学へ移り、D1大学チームの栄養管理を行う。21年の東京五輪ではチームUSAに帯同。22年1月よりUSOPCでシニアスポーツ栄養士に着任。現在、アクロバット、コンバットスポーツ担当として、レスリング、柔道、テコンドー、器械体操代表チームなどの栄養サポートを行う。

(THE ANSWER編集部)