綿貫敬介が「東北『夢』応援プログラム」で1年間取り組んだ新しい指導のカタチ
公益財団法人東日本大震災復興支援財団は、東北の子供たちを対象に、アスリートやプロの指導者が1年間指導する機会を提供する「東北『夢』応援プログラム」を立ち上げ、未来の東北を担う子供たちへの支援を続けている。東日本大震災から7年――。2018年3月11日。福島・いわき市のテニスコート「ア・パース」には、小中学生29人に熱血指導するプロテニス選手の綿貫敬介(明治安田生命)の姿があった。
現役テニス選手と福島の子供たち、“遠隔指導”で生まれた絆
公益財団法人東日本大震災復興支援財団は、東北の子供たちを対象に、アスリートやプロの指導者が1年間指導する機会を提供する「東北『夢』応援プログラム」を立ち上げ、未来の東北を担う子供たちへの支援を続けている。東日本大震災から7年――。2018年3月11日。福島・いわき市のテニスコート「ア・パース」には、小中学生29人に熱血指導するプロテニス選手の綿貫敬介(明治安田生命)の姿があった。
「1年間、動画での遠隔指導を通じて、みんなの技術がしっかりと向上してきたことを感じました。今日はその成果を見せてください」
「夢応援マイスター」として「東北『夢』応援プログラム」に賛同した綿貫。こう声をかけ、成果発表を含めたクリニックが始まった。昨年4月から1年間、「スマートコーチ」という遠隔指導ツールを活用し、技術指導をしてきた。綿貫の指導を通じ、実力を上げた教え子の中には、東北大会、全国大会に出場するまで力を伸ばした選手もいた。
「基本的なストロークでのボールとの距離の取り方を細かく指導しました」
生徒一人一人とラリーを行いながら、課題を指摘し、克服するために熱く指導した綿貫。そして、午後2時46分。大震災の起きた時刻には練習を中断し、全員で黙祷を捧げた。
ナショナルトレーニングセンターで震災を経験「あの恐怖は忘れません」
7年前の震災当日、都内のナショナルトレーニングセンターにいた。ナショナルチームの一員だった綿貫は手首を痛め、MRI検査を受ける直前だった。
「数百人と一緒に目の前のサッカー場に避難しましたが、建物も照明も大きく揺れていました。あの恐怖は忘れません」
交通機関が麻痺し、綿貫もトレーニングセンターの会議室で一夜を過ごした。宮城出身のチームメートの実家が津波で流されるというテレビ映像も隣で目撃した。17歳だった綿貫の心にも傷を残した。この経験が家族とともに埼玉県内で東日本大震災のチャリティイベントを開催し、100万円とテニスラケットなどを被災地に寄付する原動力となったという。
「大人になってもテニスと関わる仕事がしたいと話している生徒もいました。被災地の子供たちの夢を応援したい。僕もその一心です」
1年間の成果発表イベントを見守った綿貫は、生徒たちから写真入りの寄せ書きを手渡しされた。「こんなにしてもらえるなんて……涙が出そうです」。被災地と離れていても、つながっていられる。遠隔指導を通じて、生まれた絆。子供達からの感謝のメッセージに綿貫は、目を赤く染めていた。
(THE ANSWER編集部)