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「引退した時に何が残るか」 慶大に入試で現役合格、フェンシング飯村一輝が文武両道を貫く理由

飯村一輝(右から2人目)ら男子フルーレ団体の日本代表が7月の世界選手権で史上初優勝。パリ五輪でもメダル獲得を狙う【写真:日本フェンシング協会/Augusto Bizzi/FIE】
飯村一輝(右から2人目)ら男子フルーレ団体の日本代表が7月の世界選手権で史上初優勝。パリ五輪でもメダル獲得を狙う【写真:日本フェンシング協会/Augusto Bizzi/FIE】

フェンシングと勉強を両立するための工夫

 国内のみならず、グローバルに目を向ける機会があり、そこで気づいたからこそだった。

「フェンシングは相手との駆け引き、考えてやるスポーツでもあるので、そういった点でも賢くなっておいて損はないかなと思います。ただ、自分が引退間近になって何も残っていないみたいな状況にはなりたくないなと思って、今のうちにやっておこうと思いました」

 高校1年生で日本代表として海外遠征を経験したのを皮切りに、国際的な視点も得た。勉強を頑張ろうという意志の力になったのは、「環境」だと言う。

「僕が通っていたのは中高一貫校(龍谷大学付属平安高等学校・中学校)でした。そのため中学生の頃から高校生で学ぶことを先取りするような感じで勉強していました。その中でお互いに切磋琢磨しあう感じでしたね。高校3年の時には国公立文系コースで勉強していて、周りは国公立をゴリゴリに受験するような人たちだったので、そういった環境の中で勉強できたのも良かったと思います」

 ただ、海外遠征は貴重な視点をもたらした一方で、活動があればその分、勉学にも影響を与える。飯村はどのように両立を図ってきたのか。

「遠征先でも飛行機の移動中でも勉強して、穴をいかに埋めるかを考えていました。隙間時間ってやっぱりあるじゃないですか。練習と練習の合間だったり、寝る前だったり。遠征はヨーロッパが多いですけど、勉強をすることで時差調整をしたり、そういう工夫もしていました。上手く時間を作り出して先取りで勉強していて、先生に『お前、俺いるか?』と言われてちょっと嬉しかったり、『遠征に行っているのになんで点数が取れるの?』みたいなクラスメートとの掛け合いもけっこう楽しくて(笑)」

 そうしたこともモチベーションとなった。

 大学生となってからも、両立を図る日々は変わらない。

「数週間単位でボコッと抜けちゃうので学校との両立はしんどいですけど、中高の頃からずっと学校とフェンシングの遠征は両立してきていますし、大学2年の夏を迎えて慣れてきて、先生とのコミュニケーションだったり、そういった点でもやりやすくなってきたかなと思います」

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松原 孝臣

1967年生まれ。早稲田大学を卒業後、出版社勤務を経てフリーライターに。その後スポーツ総合誌「Number」の編集に10年携わり、再びフリーとなってノンフィクションなど幅広い分野で執筆している。スポーツでは主に五輪競技を中心に追い、夏季は2004年アテネ大会以降、冬季は2002年ソルトレークシティ大会から現地で取材。著書に『高齢者は社会資源だ』(ハリウコミュニケーションズ)、『フライングガールズ―高梨沙羅と女子ジャンプの挑戦―』(文藝春秋)、『メダリストに学ぶ前人未到の結果を出す力』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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