プロ引退から1か月半で教員採用試験に合格 高校バスケの監督になった元千葉Jのセカンドキャリア
セカンドキャリアを選ぶ時は「やりがいを求めてほしい」
女子バスケ部のアシスタントコーチ(AC)、男子バスケ部のACを経て、昨年秋から監督に就任。プロでの自身の経験を踏まえ、スケジュールをガラッと変えた。昨年までは遠征に出て練習試合を重ねていた2~4月を体力強化のトレーニング期間に変更。勝てるようになるまでは「これで大丈夫?」と疑う周囲の声も耳に入った。星野監督自身も「凄く思い切ったので心配ではあった」と正直に明かす。
それでも貫き通せたのは、カテゴリーが上がるごとにフィジカル面での遅れを痛感した自身の苦い思い出があったから。大学やプロでも頑張りたいという選手の夢を聞き、卒業後も見据えた。「『シュートが入ったチームが勝つ』というチーム作りよりも、ある程度体を作って、大学などその後に活躍できる礎を作れたら」。肉体強化で泥臭く体を張れるようになり、結果もついてくるようになった。
試合になかなか出られなかった千葉ジェッツ時代、小さなファンからの純粋な「頑張れ!」という言葉に助けられた。「そういったプロ選手を夢見る子どもたちに、バスケットの楽しさを教えたい」。ジェッツのスクールで子どもたちに指導する機会もあった。「指導したら子どもたちの表情が良くなった」。できることが増えて嬉しそうな子どもの姿を見て、教員になりたい思いがさらに強くなった。
教え子の表情が明るくなることで感じるやりがいは今も同じだ。延岡学園に敗れて2回戦敗退となったものの、全国大会で1勝を掴み取った。「プロのコートに立つワクワクさとは全く違う。監督でこういう舞台に立った時のほうが幸せな気持ちは大きい」。ハイタッチを交わす選手たちを見て、指導者としての喜びを実感できた。
プロアスリートの選手寿命は短い。引退後の長い人生をどうするか。セカンドキャリアを送る“先輩”としてのアドバイスを求めると、星野監督は言葉を選びながらこう言った。「自分がどういう部分でやりがいを感じるか。地位とか名誉とかお金じゃなく、本当にやりがいを感じる仕事を求めてセカンドキャリアを選んでほしい」。勝った生徒を嬉しそうに労っていた監督の姿には説得力があった。
(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)