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渦巻く批判「他国の出場枠を利用した」 国籍変更、内定取消…ビリから2番目の42.195kmの先に響いたカンボジアコール――マラソン・猫ひろし

「ビリから2番目」であっても沸き起こったカンボジアコールは忘れられない【写真:鈴木大喜】
「ビリから2番目」であっても沸き起こったカンボジアコールは忘れられない【写真:鈴木大喜】

忘れられないカンボジアコール「成績はビリから2番目ですけど…」

 リオのゴールは、まだ先だ。

 足のマメはつぶれ、暑さは増していくばかり。早く終わってほしいと願っていると、後ろからお互いに頑張ろうと言うように背中をポンと叩かれた。ヨルダンの選手だった。最下位かと思っていたら“もう一人いた”と分かったことで、猫にギアが入った。最下位には絶対になりたくなかったからだ。

 必死になって走り続け、やっとゴールが見えた。耳には歓声が入ってきた。

「最後は、リオのカーニバルをやっている直線コース。晴れていて、なんかキラキラしているんです。子どものときにテレビで観たオリンピックって、こういう感じだったよなって思いながら走りました。メチャメチャ気持ち良かったです」

 両サイドの観客に手を振りながら、間近に迫るヨルダンの選手を振り返りながらニャーのポーズでフィニッシュを迎えた。タイムは2時間45分55秒、猫は138位で走り終えた(完走は155人中139人)。そして最後に入ってきたヨルダンの選手とハグをした。

 会場が盛り上がると、感動を体で表現したくなったのか猫は踊り出す。リオのファンはノリがいい。踊りに合わせたカンボジアコールが巻き起こり、芸人であることを知らないであろう各メディアもカメラを向ける。スタートで何のアピールもできなかった芸人ランナーが、世界から脚光を浴びた瞬間だった。いつの間にか、持ちギャグの“らっせーら~”まで飛び出していた。

「ずっと踊ってました(笑)。あのカンボジアコールはうれしかったですね。成績はビリから2番目ですけど、でも一生懸命にやることっていうのはすごいいいことだなっていうふうには思いました。マメに負けなくて本当に良かった。ネコがマメに負けたって、シャレにならないじゃないですか!」

 オリンピックは最高だった。

 マメをつぶした足の痛みなんて、もう気にならなくなっていた。

(後編に続く)

(二宮 寿朗 / Toshio Ninomiya)

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二宮 寿朗

1972年生まれ、愛媛県出身。日本大学法学部卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。2006年に退社後、「Number」編集部を経て独立した。サッカーをはじめ格闘技やボクシング、ラグビーなどを追い、インタビューでは取材対象者と信頼関係を築きながら内面に鋭く迫る。著書に『松田直樹を忘れない』(三栄書房)、『中村俊輔 サッカー覚書』(文藝春秋、共著)、『鉄人の思考法~1980年生まれ戦い続けるアスリート』(集英社)、『ベイスターズ再建録』(双葉社)などがある。

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