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スポーツトレーナーの職業に求められる資格、能力 先輩2人が推奨「絶対に向いている」興味の中身

トレーナーの仕事は「社会を豊かにする可能性がある」と泉さん【写真:中戸川知世】
トレーナーの仕事は「社会を豊かにする可能性がある」と泉さん【写真:中戸川知世】

人間の体の神秘さ、面白さに興味がある人は「絶対にトレーナーに向いています」

――では、トレーナーに必要な力とは?

中野「人間の体の神秘さや面白さに対して興味がある方は、絶対にトレーナーに向いています。人間は一つの骨をとっても、形状や角度がすべて決められ、そこには『なぜか』の理由があります。どうすればもっといい動作に変えることが出来るか、障害を起こさないように出来るか。私自身、そこを突き詰めていく面白さに魅了されています。逆に、学びを止めたら、我々の仕事はおしまいだと思います」

泉「学びの継続は同感です。それと、現状をありのままに『伝える力』、目的や気持ちを言語化してもらうために『話を聞く力』、よりよい体になるために段階的に身体を作るプランを『提案する力』も必要。そのベースとなるのが、コミュニケーション能力です。対アスリートだけでなく、コーチと、時にはご家族の方にも理解してもらうよう、説明する力やアテンドする力も我々の仕事には必要だと思います」

中野「コミュニケーション能力は基本です。我々は選手たちと時に、パーソナルに接することもある。それを含め、目標に向かって二人三脚で歩んでいくのが、トレーナーの仕事ですから」

泉「そうですね。スポーツトレーナーは、クライアントの人生に寄り添い、生活に根付くようなことを伝える仕事です。これは、相手が身体を鍛え、世界一を目指すアスリートであろうと、生涯健康でありたいと願う一般の方であろうと取り組む価値は同じ。トレーナーには、担当する相手に歩みより考えられる力はとても大切です」

中野「あとは……これは個人的な考えですが、やはり『好き』に勝る力はないかと思います。例えば私自身、身体やトレーニングに関わる新しい知識、情報は全部『面白い』と感じますし、『勉強をしよう』と思いながらトレーニングの専門書を開いたことは一度もありません。また、トレーニングのセッションは楽しくて仕方がない。

 朝起きたとき、『今日の仕事は1日中、パーソナルセッションだ』と考えるだけでワクワクしてしまう(笑)。自分でもいつか嫌だなと思うときが来るのだろうかと思っていましたが、30年経っても、思う日はありません」

泉「わかります。セッションによって一緒に体験し、熱を伝え、心動かすことのやりがいは尽きないですよね。実は今日、ジャンプトレーニングの見本を選手にみせるために私自身、実践シュミレーションしたのですが、これもトレーナーの現場の仕事では何歳になっても必要なスキルだなと感じました。砂浜で安定して走る見本をすることもありますし(笑)、いつでもスプリントが出来る状態でいたいので、アキレス腱に炎症を起こしたりしないよう、我々自身もきちんとメンテナンスをしていかないと!」

中野「いや、本当にその通りです(笑)」

――最後にスポーツトレーナーを目指す学生たちにコメントをお願いします。

中野「トレーナーの仕事は、誰かのためになる仕事ではなく、誰かと一緒に自分の夢を叶える仕事だと思います。大切なのは『あなたの夢を叶えあげる』ではなく、一緒に叶えていくという気持ちで取り組むことです。その過程で得た嬉しさや楽しさが、この仕事の醍醐味だと感じます。

 クライアントの夢を叶えることは、自分の夢にもなる。しかも、キャリアを積めば積むほど解決できるケースが多くなり、人々に必要とされる。その喜びや奥深さを、若いトレーナーやトレーナーを目指している方たちにも、是非、体験して欲しいと思います」

泉「私は人の人生において、目標を達成したり、体が少し変わったりすることで、その方の自信につながる瞬間を何度もみています。そこには継続させる熱や気持ちが動かないと、体も変わらない。ですから、私はそこで心の琴線に触れ心が動く瞬間を共にしたときに、この仕事の意義を感じます。

 トレーナーの仕事は学びの連続になりますが、社会を豊かにする可能性を持ちます。また、『運動や健康づくり』を通じて幅広い世代の方と関わり、喜びを実感できる仕事です。皆さんにも、それらを感じる未来が待っていることを願っていますしそんな皆さんとご一緒に礎を作れる日を楽しみにしています」

――ありがとうございました。

(※1)1954年創設のヘルスフィットネスやスポーツ医学の資格を認定する世界90か国会員がいる国際的な組織。(ライセンス:ACSM/EP)
(※2)1978年に設立されアメリカ・コロラド州に拠点を置く、National Strength and Conditioning Associationのストレングストレーニングとコンディショニングに関する国際的な教育団体。(ライセンス:CSCS、NSCA-CPT)
(※3)1950年に設立のアメリカのアスレティックトレーナー団体でアメリカでは準医療従事者として認められている国際的な組織。(ライセンス:NANA-ATC)

■中野ジェームズ修一 

 フィジカルトレーナー、(株)スポーツモチベーション 会員制パーソナルスポーツクラブ『CLUB100』最高技術責任者、PTI 認定プロフェッショナルフィジカルトレーナー、米国スポーツ医学会認定運動生理学士(ACSM/EP-C)。フィジカルを強化することで競技力向上や怪我予防、ロコモ・生活習慣病対策などを実現 する「フィジカルトレーナー」の第一人者。オリンピアンを始め、多くのアスリートから絶大な支持を得る。2014 年からは青山学院大学駅伝チームのフィジカル強化指導も担当。早くからモチベーションの大切さに着目し、日本では数少ないメンタルとフィジカルの両面を指導できるトレーナーとしても活躍。『世界一 伸びるストレッチ』(サンマーク出版)、『青トレ 青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ』(徳間書店)、『医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本』(日経 BP)などベストセラー多数。

■泉 建史

 フィジカルトレーナー/フィジカルコーチ、日本オリンピック委員会(JOC)医科学強化スタッフ、ナショナルチーム・フィジカルコーディネーター、米国スポーツ医学会認定 運動生理学士(ACSM/EP-C)。2019年年、NSCAジャパン最優秀指導者賞受賞。ナショナルトレーニングセンター競技別強化拠点施設の医・科学サポートプロジェクト委員、近年は東京2020、パリ2024、ロサンゼルス2028世代を強化。体操競技をはじめ複数のスポーツ強化を歴任、プロスポーツではWILLING所属JRA日本中央競馬会・競馬学校・トレーニングセンター騎手実践課程フィジカル育成を担当。東大阪市ではスポーツ教育アドバイザーとして活動、国際的な組織のNSCAジャパンのエリアディレクターとして後進の教育に力を注ぐ。『1252女性アスリートコンディショニングエキスパート検定』(東洋館出版社)運動処方パート執筆、『W-ANS ACADEMY』情報支援、SDGs活動など多数。

(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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