真の世界トップを狙う日本No.1ランナー がむしゃらな田中希実のプロ転向決断の裏側
印象的なボストンの猛者たち「互いに認めている。あなたを尊重しているよって」
10月、いまや中長距離、マラソン大国となったケニアで合宿した。「打開したい。自分自身を変えないといけない」。国内と海外を行ったり来たり。今年2月には「チームニューバランスボストン」の練習に参加した。各国で代表に入る女子中距離の同社契約アスリートたちが集うチーム。レベルの高い環境はもちろん、アットホームで互いに敬意を払う関係性にも魅了された。
「一緒にレースに出たことも凄く楽しかった。私はどうしても練習は厳しいもの、しんどいものというイメージがあったけど、楽しんで練習をしていた。きついワークアウトも『挑戦するイベント』のような感じだったのが凄く印象的。プロの集団ですが、ファミリーの要素もある。
練習を楽しんでいるし、互いを認め合っている。本当のファミリーではないけど、走れても走れていなくても『あなたのことを尊重しているよ』って。互いを凄く認め合っているのが伝わってくるチームでした」
走ることを楽しみ、自分を高める中で「居場所をつくること」を意識した。「認めてもらうことが第一。中に入ることに必死だった」。無我夢中になった期間。終わってみて思った。「これがハングリー精神だったのか」
3月半ば、決断した。
「一人だけの練習でも、他の人とやっても逃げてしまう時がある。どうして逃げてしまうのか。やっぱり覚悟が足りないと思う。取り組み方、姿勢を変えていかないといけない。同じ内容の練習でも、いろんな人と絡みながら練習するだけで姿勢が変わる。
今までは自分の中の潜在能力を信じられていたし、それに対して支えてもらえる環境があったことで相乗効果があった。けど、今後はもっと世界のトップを目指すなら、もともとの潜在能力以上の力が必要。精神論ではないですが、より強い想いと確かな取り組みが必要になってくるので、プロ意識が大事になると思う。
大学1年からニューバランスさんのサポートはあったけど、プロとして、ニューバランスアスリートとしてやっていくことで根っこから変える。高校でも、大学でも自分の居場所をつくる、自分を認識してもらうことを必死にやってきた。国内では認識していただけることが増えてきた中、海外で認知してもらうにはどうするか考えた時、もっと覚悟を持たないといけないと思いました」
4月1日付でニューバランス所属になった。練習内容を大きく変えるわけではないが、まずは心を変える。今後は国内の拠点に腰を据えつつ、ケニア、ボストンを含めた海外にも明確な目標を持ってトライする。
「国内でも実業団、学生、高校の枠組みを取っ払って、こちらから絡んでいったり、逆にこちら側に絡んでもらったりすることが可能になる。国内外問わず、いろんな方と縁を持っていきたいと思います。タフさを身につけるためにケニアに行く機会も増やしていきたい。自分自身や支えてくださるたくさんの方の想いに報いることができるように頑張っていきたいと思います」