元甲子園球児経営者が野球部を贔屓するマジメな理由「活躍する人に『補欠』の共通点」
ビジネスで活躍する野球部の共通点「実は補欠」
――野球部出身者が活躍できる場を作りたい思いは何がきっかけで生まれたのでしょうか。
「働き方改革の影響で、残業しづらい世の中になったことが大きいです。野球部の活動には残業の概念はない。むしろ、居残りや個人練習で差をつけないと、全体練習の1か所バッティングや投内連係で結果を出せない環境。でも、ビジネスでは大事な個人練習が制限される世の中になった。これをどう打破するかを考えたとき、取締役になってもらうか、業務委託、つまり雇用関係を外すかという壁にぶち当たりました。
その後、『起業して、時間にとらわれる働き方をするな』ということを発信するようになったのですが、一方でみんながみんな起業したいワケじゃない。向き不向きもあると思い、業務委託という契約形態が実は優れているんじゃないかと。『あなたを守るけれども、成長も疎外しません』と双方の利益を同時に満たせる付き合い方。無期雇用ではない分、互いに緊張感を保ち、健全な関係を構築できる。これでどんどん人を増やす方が理にかなっている。
ただ、『業務委託』というと下請け感が出てしまいますが、『プロ』という言い方をすると一気に見方が変わります。これがよく考えたらプロ野球と同じだなと。フリーランスだけど副業的な働き方ではなく、全て社員と同等の準備をした上で『(待遇の)上がり下がりはちゃんとするよ』という環境を用意することが、働き手にとって健全に成長できる場所。それをコツコツと作ってきました」
――プロ野球球団の営業集団版のような形を目指しているのですね。
「そうですね。プロ野球と違う部分を挙げるとすれば、例えば野球の技術はグラウンドから一歩外に出ると、凄いスイングや投球は活かせません。一方でビジネスでは、営業スキル自体はどの会社や組織に行っても普遍的に使えます。より個人のキャリアのベースを作れる点は自信を持っています」
――野球部出身のビジネスマンとも数多く関わって来たと思います。活躍できる人に、なにか共通点を感じますか?
「僕の視点では、活躍している人の共通点が『実は補欠』ということ、または挫折の経験を持っていることが重要ということに気づきました。一見、野球のエリート街道を走ってきたように見える人も、より高いレベルで挫折したなどの経験をしていることがあります。僕も甲子園に出たことがありますが、次の夏の大会でベンチを外れて悔しい思いをしました。そういう経験がある人に強さを感じます」
――その共通点は興味深いですね。補欠だったことが、なぜビジネスに活きるのでしょうか。
「ビジネスの構造は、ほとんど『誰かの代わりにやってあげること』で成り立っています。だから補欠やベンチ外として、レギュラーを支える仕事をやってきた人が活躍しやすい。前職でも野球部出身の同僚がいましたが、活躍している人は『俺、背番号もらってないから』という人が意外と多かったです。
(補欠だったことへの)悔しさもあるし、野球の試合が健全に行われるための準備をする経験が、実はビジネスの順応度を高めている。間接的に聞く中では、逆にずっとエリートで来た子の方が順応度は遅いと感じています。野球の場合、例えば、甲子園は注目される選手と応援する選手がはっきり分かれている。挫折の体験という共通項があると、『頑張ろうぜ』と言いやすいです」